第50話 取材

 ところで皆さん、取材ってしますか? いや、しますよね。フツーに。

 私もしました。『いちいち癇に障るんですけどっ!』は私の全くわからない建設機械メーカーの話なので、建設機械屋さんにいろいろ聞き出しました。

 とは言っても、私もエンジニア上がりなので、作中で花子の考え出したシステムは全部自分で考えたものです。それが現在の建設機械に導入されているか、予定はあるか、そのシステムの構想さえまだ存在しないか、きちんと確認する必要があります。

 取材した建機屋さんには下読みもお願いして、ゴーサインが出るまで何度も直しました。今考えると、かなり大変な作業を頼んでいたものです。

 しかもその会社の皆さん、『いち癇』結構買ってくれてます。ありがとう!


 他にも天橋立や淡路島の記述やなんか、実際に行ってますので、見たまんま書いてます。

 連載当時はノートの方に「他人のブログからネタを盗んだだろ」というような言いがかりをつけられたこともありましたが、行ってなければ書けないことがたくさんあります。駅前の大きいホテルに泊まったしね。アワビ美味しかったしね。ウミウがいっぱいいて可愛かったしね。ボンネットバス停まってたしね。

 確かにググって書けることもたくさんありますが、実際に行ってみると些細なことでリアリティが出ますね。クラゲがどうの、貝殻がどうの、風がどうの……。坂道になってるかどうかなんて、地図じゃわかんないもんね。


 ですが、全部が全部その土地になんか行ってられません。検索して書けるところは検索に頼ります。サクッと流していいところに時間はかけられませんよね。

 拙作『P-WORLD』では日本中ウロウロするし、海外にも出ちゃいますんで、そんなとこまで行ってらんねーよな感じだし、無人島の話を書くのに無人島には行かんでしょ、ってことで。



 さて、取材って言うと、なんだか肩肘張って「さあ、取材だ!」って感じに思ってましたが、実際如月の取材は普段の生活に馴染んでます。


 如月、人です。


 先程もスーパーで晩白柚ばんぺいゆを買ってるお婆ちゃんを見つけて、もう声を掛けずにいられない。

「あの……それってどうやって食べるんですか?」(ネタにする気満々)

「ミカンと同じだよ。皮が厚いからねぇ、包丁で剥くんだよ」

「美味しいんですか?」

 ……なんてやってたら次々にお婆ちゃんが集まって来て、しまいにはお婆ちゃんに囲まれてしまいました。お婆ちゃんハーレム、老女キラー健在です(?)

「実の部分はそのまま生で食べんのよ」

「うちの孫も大好き」

「皮を薄く切ってねぇ」

「そうそう、お砂糖で煮詰めるの」

「ええと、マーマレードみたいにするんですかね?」

「柚子茶みたいなもんよ」

「あれは美味しいねぇ」

 身長差があるので、顎の下で会話が弾んでいます。私も会話に入れてください、質問してるのは私です!

 っていうか、晩白柚って、こんなバカでかいミカンがぶら下がってて、枝が折れたりしないんだろうか、などと新たな疑問が湧いたまま家路につくのでありました。



 他にも、家を建ててる大工のおっちゃんたちがお昼にお弁当を食べてるところに声を掛けたり、公園で子供を遊ばせているお母さんたちに声を掛けたり……今考えると、如月、かなり不審者入ってますね。まだ通報されたされたことはありません。イケメンの特権ですね(すいません誰かツッコんでください)


 ま、あれですね、『取材するぞー』って頑張らなくても、普段からいろんなことに興味を持って、いろんな人と話をすることがネタに繋がっていくんでしょうか。

 と言いつつ、家にあるテレビを五年も見ずに、ついに撤去してさらに十年経ったという私が何を言うのだという気もしますが……。


 ふはー……またシロート発言をしてしまったようだな。

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