第49話 自作品には容赦しねえ!(2)
はい、第48話からの続きです。コラボ企画のお話です。
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……どこやねん! しばくどワレ!
そこから徹底的に設定の作り込み開始です。
どの辺りのお話なのか。森の規模はどれくらいか。『街』か『町』か。登場人物の過去は、人間関係は、家の中には何があるか、どんな車に乗ってるか……。
六月さんいきなり最初っから泣いてます。「えーん、玻璃音はなんとなくアバウトでも書けたもん、アバウトな方が雰囲気があっていいんだもん、池に氷が張ればそれでいいんだもん、みゅう~」
はい、ワタクシ如月に泣き落としは通用しません。六月=如月です、自分の泣き言は聞きません。
見取り図やイメージイラストをガンガン描いて、設定を作り込んでいきますが、六月さんはそんなことしたことありません、ずっと目を回しています。
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なんやかんやで夏の話が一旦完結して、何を血迷ったのか「秋も書こう」という事になりました。それが地獄を見ることにつながるとは、彼女は予想だにしていなかったのでしょう。
ただでさえ(六月さんから)厳しいと言われている如月が『いち癇』の書籍用改稿を裏でやっているのです、プロの編集さんや校閲さんとやり取りしているのです。ますます厳しいモードに入っています。
しかも発売が11月、まさに修羅場のときです。最初のうちは言葉も優しいのに、だんだん必要最小限になっていきます。何しろ六月さんを自分の一部と見做してますから容赦がありません。
「ここは二通りの意味に捉えることができます。読点の位置を変えるか、文節の順番を入れ替えるか、違う言葉に差し替えるか、何らかの工夫が必要になります」なんて感じで事務的にやるものだから、六月さんにはめっちゃ怖い人間に映ってきます。
ビビってオシッコちびりそうになっているところに「脱兎のごとくうさぎが逃げるって、そのまんまじゃないですか」ってこちらが笑いながら書いていても、向こうには顔が見えないので「えーん、如月が怒ってる、怖いよぉ、もうやだ、やめる」と思うわけですね。
最初のうちは「てへ、ちょっとおかしいにゃ」とか言ってたのがだんだん余裕がなくなって来て「みゅーん、ごめんなさい、ぐすん」になり、しまいには「すいません」になって、そこでやっと私が「あ、やべえ、六月さんマジでビビってる」と気づくという……。
それでも一度『書く』と決めたら絶対に何があっても逃がさないのが如月です。(六月的に)如月が怖すぎて彼女が途中で逃げ出したり、部屋の隅っこで膝を抱えていじけていたりしても、絶対に容赦しません。
「作家になりたかったんでしょう? 六月さんの書くものを待ってくれている読者がいることを忘れちゃいけませんよ」
今考えると、なんちゅー恐ろしいことを言ってたんでしょうね。逃げ出したくなってる時にこんなこと言われたらフツー泣きますよね。ごめんね(今更)。
しかーし、六月さんも負けていません!
「何それ、書籍化作家になったらいきなり上から目線?」なんて噛みついてくる。
「今そういう話じゃないでしょう、読者にとって親切な書き方をしているかどうかの話じゃないですか」
「だって如月、何書いても怒るんだもん」
「怒ってませんて、提案ですって」
「だったらそんな言い方しなくたっていいでしょ!」
(中略)……(白熱)
「もっと優しくしてくれてもいいじゃない!」
「優しくってなんですかそれ」
「その言い方が冷たいの!」
「甘ったれてんじゃねえよ、作家になりたいんだろお前」
「もうやだ、如月のバカ、きらい!」
(六月ダンマリを決め込む)
……こんな会話を、顔も知らない者同士でやってるんだからすごい話です。彼氏と彼女の痴話喧嘩みたいなノリですね。あんまり面白いんで、これをネタにラブコメ一つ書いちゃいましたからね(なんでもネタにする如月)。
あ、因みにこれ、ちゃんと六月さんの許可貰って書いてます。
*
まー、あれですな。コラボは大変です。相手をちゃんと選ばないと、六月さんのように毎日泣く羽目になります。
が、我々は相性が良かったのでしょうか、あれだけ派手にやったのに、その後も仲良くやってます(えっと、仲いいよね? ね? 六月さん?)。
コラボをすると、その相手が自作品とどんな風に向き合っているのかが垣間見えて面白い(怖い)ですよ。皆さんもどなたかとチャレンジしてみてはいかがでしょうか!
……またシロート発言をしてし……六月、その銃口をこっちに向けるのやめろ。
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