第47話 それ、読まねーわ


 先日、お友達同士でこんな話をしている人を見かけました。


「新作が恋愛ものなんだわ」

「ごめん、俺、その系統はぜってー読まんわ」

「だろうね。これはあんたは読まんと思う」


 この会話が普通にできる。この二人は本当の友達なんだろうなと思いました。

 私自身、好きでもない系統のものを、社交辞令で「読みに行きます」と言われたり、いやいやながら読まれたりしてもちっとも嬉しくない。

 面白くなかったのに「面白かったです」と言って欲しくもない。寧ろつまんなかったら「チョーつまんねーよ」と言って欲しいし、どこでブラバしたか教えて欲しい。それを参考に直せるんだから。



 とある私のお気に入りの作家さん、メインで書いているのがアイドルものです(この時点で大体どなたか想像がついてしまうかもしれない)。私はこの人の某弁護士物語が好きなのです。大大大好きなのです!


 しかし、この方の代表作は恐らく『アイドルもの』。

 で、私ははっきり言いました。如月、命知らずです。


「私、アイドルに全く興味ないんで、アイドルの方は読まないと思います」


 KGBを知ってても、AKBのセンターが誰かわかりませんから。それ以前に誰がいるのか知りませんから。

 そしたらその作家さん、なんておっしゃったと思います?


「じゃあ、如月さんが読みたくなるようなアイドルもの書きますよ。アイドル世界の闇を弁護士に相談するなら読むでしょう?」


 その一言で完敗でした。次の瞬間には「お願いします、読ませてください」とPC画面に頭を下げていましたね。純粋に読みたいと思った。早よ! 映画化!


 てかさ。

 カッコいいと思わない? 

「如月さんが読みたくなるようなアイドルもの書きますよ」ですよ?

 やべえ、カッコええ! 萌え死ぬ! 作家的に超絶カッコええ!(悶絶)

 このセリフ、どっかで使いたいよってくらい痺れました。思い出しても痺れる。

 もうね、こんな台詞とてもじゃないけど今の如月には絶対に言えないもん。いつか絶対このセリフ言ってやる!(しかも涼しい顔で!)

 そして誰かに「如月さん、超絶カッコええ!」って言わせるんだ!(目標)



「読んで貰ったからお付き合いで読んであげる」のか。

「読まずにはいられないようなものを書く」のか。

 その違いが作家のしつに繋がるんじゃないでしょうか?


 とは思っても、その『読まずにいられない』ものを書くのは至難の業で、なかなかその領域まで到達できずに足掻いているわけですが。



 はぁ……またシロートが自爆発言をしてしまったようだな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る