第41話 数え方

 かえるぴょこぴょこ みぴょこぴょこ 

 あわせてぴょこぴょこ むぴょこぴょこ


 ご存知ですね。なんだかわかんないけどみんな知ってる。

 少し前に高校生とこんな議論をしました。


「ここでいう『み』と『む』は数字の三と六だと考えると、三匹のカエルの団体を二つ集めたときに六匹になるということだよね」

「でも、カエルを数える単位は『匹』だよ」

「じゃあ、『ぴょこ』ってのは何だろう?」

「カエルを数える単位?」

「いやいや、『匹』だって」

「でも、羊が一匹、羊が二匹って数えるじゃん、実際は一頭二頭でしょ? 『羊が一匹』は慣用句的な使い方なのだと考えると、カエルも一ぴょこ二ぴょこと数えてもいいのかもしれない」

「そりゃないっしょ?」

「ヘビは一にょろ二にょろとかの方がわかりやすいよね」

「本気で数え方の事、知りたい?」



 実際は学術的にはみんな『とう』です。が、日本で一般的に使われているものは生き物によって違います。


 先ず哺乳類。基本は『頭』です。でも抱っこできるくらいのサイズ以下は『匹』とも数える。

 わかりやすいのが犬で、チワワやポメラニアン、ミニチュアダックスなんかはみんな『匹』なのに、土佐犬やセントバーナードみたいな大型犬は『頭』ですね。

 それは陸上水中に関係なくその傾向があるようで、クジラやシャチなども『頭』で数えます。

 馬になると、人が乗った状態では『一騎』なんて数え方もあるし、有蹄類全般として考えるなら『一蹄』と数えることもあったりして、ますますややこしい。


 鳥は『』で数えますよね。でも全部じゃない。ダチョウやエミューのような『大型で飛べない鳥』はやっぱり『頭』。飛べなくても小型種であるキウイやウズラは『羽』だし、ペンギンも『羽』。昔は鳥と同じ扱いを受けていたウサギも例外的に『羽』ですね。そのくせ哺乳類であるコウモリは『頭』か『匹』。ああ、紛らわしいことこの上ない。


 じゃあ、羽がついてりゃみんな『羽』なのかと言えば、昆虫は『匹』で数える。

 これも理由が明確にあって、虫の羽は『はね』という字を使います。蝶や蛾が『鱗翅目りんしもく』と呼ばれるのは、鱗粉の付いた翅をもつ仲間だから鱗翅目ですね。『羽』って字を使わないから『一羽』とは数えない。


 大変なのは魚! もう、『匹』でいいじゃんって思うんだけどそうはいかない。『』は割とメジャーなところですが、犬同様、その大きさや形によって呼び方が変わるから厄介です。

 ヒラメやカレイ、あんなひらひらと平らな奴は『まい』なのに、カツオやマグロなどは『ほん』、そのくせサヨリやシラウオみたいな細長い魚は『すじ』なんて数えることもある。

 イカ・タコ・カニに至っては、泳いでるときは『匹』なのに、店頭で売られるときは『杯』になってる。


 大体さー! マグロ一つとっても、その状態で全部呼び方違うんだよ?


 ひき:生きて泳いでいる

 ほん:釣り上げた状態

 ちょう:三枚おろしの半身

 ふし:半身を切り分けたもの

 ころ:ブロックにしたもの

 さく:細長いサクにしたもの

 パック:パック詰めされた状態

 切れ:お刺身

 皿:調理済み


 マグロ、侮れません。

 かく言う人間もその状態によって……。


 人・名:生きてる

 体:遺体

 柱:遺骨



 生き物だけでも(しかも主なところだけで)こんなにあるんだもん、他の物まで挙げ始めたらきりがない!

 皿なんかね、本体は『枚』で数えるのに、料理が乗ったら『皿』だもんね。こんなの外国人に「覚えろ」なんて言えないよね、日本語難しいです。


 あ、そういえば私の知り合いで、がいます。

 日本人的に負けてます……。



 ……ああ、今日もまたシロート発言をしてしまったようだな。

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