第7話 消さないで

 こんな話を小耳に挟みます。

「〇〇コンに出してる作品を片っ端から読んで、とてもとても考えてレビューをつけて行ったんだけど、コンテストの中間発表が出た途端に、そのレビュー付けた人たち、カクヨムから撤退して行った」

 まあね、自分の意思で参加作品を読みまくって、時間をかけてレビューを付けたわけだし、撤退したことに文句言われても困るんだけど?……というのもあるでしょう。


 だけど、私はこのレビューを丁寧につけた方の気持ちをやはり推し量ってしまいます。

 いい加減な気持ちで読んでいないと思うんですよ。コンテストに応募してる作品なんだから、「テキトーに読んでテキトーにレビュー付けとけ」って人はいないと思うんですね、いないと思いたい、いないといいな。

 真剣に読んで丁寧なレビューを心がけて、時間をたくさん使って書いたんだろうな、それを「中間選考通らなかったから撤退するね、ほなさいなら~」って消えられたら……と考えるといたたまれない。レビューも一つのというつもりで書いてる方もいらっしゃるので。



 つい昨日、拙作『GIFT』に2500字のレビューをいただいたんですね。凄まじい熱のこもったレビュー。コンテストに出す予定も何もない、フツーの作品ですよ。8万字読んでいただいただけでもありがたいのに、そこらの短編より長い(しかもなんだか格式の高い)レビュー。

 ご本人仰ってました、レビューに1時間以上かけたらしいです。


 一人の読者の人生のうち、『8万字分を読む時間とレビューを書く1時間』を私の一作品ごときに提供していただいているわけです(ここ、赤字太ゴシック)。


 物書きはそれを忘れちゃいけないと思うんですね。誰かの時間を使っているという自覚もない人が、公の場で発表したらダメでしょ、チラシの裏に書けよ。


 勿論、私もそんなこと最初は考えませんでした。考えるようになったのは何人かの読者さんのコメントのお陰なのです。


 処女作『P-WORLD』は、最初55万字ありました(第6話参照)。改稿して51万字になりました。単純計算で4万字の『無駄』があったわけです。

 カクヨムは基本的にレビューには『おすすめポイント』しか書いてはいけないことになっています。そこでレビューには『作品の良かった点』を書いて、ノートの方に『改善すべき点』を書いてくださった方がいらしたのです。

 同じように、ご自分の書評作品に「こうすればもっと良くなる」という提案をしてくださった方もいらっしゃいました。もう、足向けて眠れませんね。

 55万字読むだけでも大変なのに、シロートにもわかるように専門用語を使わず、一つずつ丁寧に教えてくださった方が何人もいらっしゃったのです。

 

 その時に思ったのが「この人は、このシロート作品に何時間かけてくれたんだろう?」だったのです。

 それ以来、「この作品は読者の時間をいただくだけの価値があるか?」を考えるようになりました。アップ時に価値があると判断したものでも、時間が経って「価値無し」と思えば下げて改稿します。そうやって常に自分の納得のいく状態にしておきたいと思うようになりました。

 そういう思考を持てたのは読者さんのお陰です。読者あっての物書きなのです。



 コンテストは、参加者にとっては本気でデビューするためのステップだったり、PVを増やすためのツールだったり、名前を憶えて貰うための場だったり、目的はそれぞれに違うと思います。違って当たり前だとも思います。


 それでも共通することはあります。ことです。


 読者さんがいて、その中には応援してくれる人がいて、コメント書いてくれる人がいて、評価してくれる人がいて、レビューを付けてくれる人がいる、そういう読者さんたちがいてナンボのもんだと思うわけですよ、物書きって。

 裏を返すと、読者さんに『物書き』にして貰っているんですよね、作者って。

 物書きである以上、読者さんは大切にしたいと私のような『読んでくれ乞食』なんかは思うわけですが、「ほなさいなら~」って人もいるわけで、そこら辺の温度差はやはりずっと埋まらないんだろうなと思うとちょっと寂しいのです。

 かと言って「ほなさいなら~」が悪いのかと言えば、そういうわけでは決してない。優先順位のつけ方が異なるだけで、それは価値観の違いでしかないのですから。

 

 ん~、温度差。この温度差が私をコンテストから遠ざける……。



……またシロート発言をしてしまったようだな。

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