第15話 内輪ネタ

 内輪ネタってありますよね。ごく一部の仲間の間でしか通用しないネタ。たまーにカクヨムでも見かけます。お友達同士でしか通じないネタで盛り上がってる。

 そういうのもアリだと思います。

 ただ、それは確実に仲間しかわからないので、仲間しか面白くありません。当然PV伸びません。それは当たり前ですね。書く人もそのつもりで書いているだろうから、全く問題ありません。


 私はそれは勿体ないのでやりません。

 誰かにそそのかされて(笑)内輪ネタを書くことがあったとしても、他の関係ない読者さんが読んでも面白いものにしたい、そうしないと誰も読んでくれないんで、なんか勿体なくてね。せっかく書いたら読んで欲しいもん。

 そういった観点から、『内輪ネタを万人向け』に書いている人もたくさんいらっしゃるし、そのような作品もよく見かけます。面白いです。ちょっと気になってノートを覗きに行くと、その元ネタが書いてあったりして、「ああ、そういう事か」とその作者さんに興味を持つこともあるんですね。



 さて、ここで別の角度から『内輪ネタ』を切り取ってみようと思います。

 第12話で少し触れた拙作『GIFT』です。読んでいない方のために一言で説明すると『音楽で無双しちゃうキャラがいる』話です。

 この話は、吹奏楽・管弦楽の経験者には「わかるー」「あるある」と大いに頷ける要素がてんこ盛り入っていると思います。ということは、裏を返すと『未経験者にはチンプンカンプン』かもしれないという危険を孕んでいるのです。


 如月は一応経験者なので専門用語を当たり前のようにガンガン使ってしまいます。『空が茜色に染まるころ』ではサックスのリードやらリガチュア、ネックの差し込み(この時点で知らない人にはチンプンカンプン)なんてことまで書き込みましたし、『nose kiss』ではギター、ベース、ドラムのことをガンガン書きました。そして『GIFT』では、ほぼ吹奏楽にしか使われないユーフォニウム(楽器の名前です)や、ピアノの構造、作曲、編曲、指揮についても触れました。


 この時に一番気を遣ったのは『読者を置いてきぼりにしていないか』でした。

 例えば『nose kiss』(これGLなんだけどね)ドラムの右足でリズムを刻むベードラ(バスドラム)、これを叩くハンマーをビーターと言うんですが、これをどう表現するか。悩みに悩んで、結果『りんご飴みたいなやつ』になっちゃったんですが、それを思いつくまで三日悩みました。アホですな。

 満を持して「ペダルの先にりんご飴みたいなのが」と書いたところ、下読みしてくれた方が「ペダルって何?」と。


 ……そこか! そこからなのか! 


 わかって書いている人は、わからない人が「どこが」わからないのかがわからない。ギブソンだのフェンダーだの、ストラトだのレスポールだのと言われても、この中のどれがメーカー名なのかがわからない。

 ならばその辺りは『わからなくていいこと』として主人公にスルーさせて、わからなければならないところはきちんと解説するようにすれば話が通る。


 読者にとって『ちゃんと理解できるように書く』ところと『わからなくていい』を明確に書き分けることで、内輪ネタにならないようにできると考えました。



 音楽一つとっても、何かの曲をイメージして書いた作品も多く見られます。

 ですが、その曲を一体何人の人が知っているでしょうか?

「知らない人は読まなくていいよ」と言うならそれはそれでアリだと思います、所謂『内輪ネタ』として、知っている人たちだけで盛り上がることができます。

 もしもそれを『内輪ネタ』で終わらせたくないのなら、その曲をイメージだけで終わらせず、温度、湿度、振動、色、匂い……五感をフル稼働してイメージできるように書いたら、きっと読者はその曲を聴きたくなるんじゃないかなと思います。


 私はそれをする自信が無いので、最初からみんなが知っているような有名な曲ばかりを選んでしまいますが……。



 ……また最後の最後でシロート発言をしてしまったようだな。

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