永久の中の瞬き
不老不死から10の10の100乗年後
10の10の100乗年とは
10の10000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000乗年
である。
勘違いしてはならないのだが、1のあとに0が100個あるという意味ではない。それは「10の100乗年」である。
ここでいっているのは「10の10000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000乗年」である。
しかしこれでは感覚的によくわからない。
「10の10の100乗」という数字は、1の後にゼロをいくつくらい書けばいいのかというと、
「1立方センチメートル(縦横高さがそれぞれ1センチ×1センチ×1センチ)あたり1つの間隔でゼロを空間に埋めていき、直径1000兆光年の球体にこれを全部埋め尽くす」
と、だいたい10の100乗個になる。(1光年は光が1年で進む距離のことで、1光年=9461000000000000メートル)
(ちなみに我々が生きているこの宇宙空間の大きさは有限だと考えられており、その直径は650億光年と推測されている。つまり宇宙空間すべてをゼロで敷き詰めてもまだ足りない)
くらいのゼロの数である。
……その「年」が経過した。
想像できるだろうか?
あなたの周りを見渡してほしい。外はとても広い。となりの県までゼロを書きつくしたら、どれくらいになる?
しかしとなりの県までといっても、せいぜい100キロメートルいくかいかないか、くらいである。
地球1周分ゼロを書いたらどれくらいだろう?地球を1周すると約40000キロメートルである。途方もない、気の遠くなるような数になるだろう。
ところが光が地球を1周するのに0.1秒と少ししかかからない。
光の速さで宇宙の端から端まで行くには600億年かかるのである。この距離をゼロで埋め尽くしても、まだまだ足りない。
宇宙全部を小さなゼロで埋め尽くすくらいの数。
しかもそれが「年」である。
1年でさえ長く感じるのに?
1年は長いだろうか?
少なくとも、この男のように、何もしない1年はあまりにも長く感じるだろう。
あなたも経験があると思うが、眠れない夜中の8時間、どれだけ長くて退屈で苦痛だろうか?
たった8時間でこれだけ苦痛なのに、この状態で1年過ごせといわれたら、あまりの苦痛に発狂しそうである。
この状態で100年過ごせといわれたら?もはやあまりにも長すぎて、想像するのすら途方に暮れるだろう。しかし100年などゼロがたったの2つである。
いまゼロをいくつ書いた?
もうわけがわからない。
もはや、われわれではとてもとても、想像することすらできない、超天文学的年月が過ぎた。
男はまだそこにいた。ビッグフリーズの状態になってから、何も変わっていない。
男は何も苦痛など感じていない。すでに感情は停止している。
肉体や精神機能も完全に停止している。確かに生きてはいるのだが、男の体はこれら膨大な時間に適応するため、このように変化した。
二度と再起動することはないだろう。
しかし男の寿命は「永久」である。
この10の10の100乗年という途方もない年月。
それも「永久」の前では、瞬きをする程度の一瞬に過ぎない。
男の命はこれから、まだまだこれから始まるのである。
to be continued INFINITELY(無限に続く)
不老不死を得たある男の一生 ヴァレー @valleysan
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