第9話 いつの間にか日常へ

失恋したその日から1ヶ月が経った。

まだ完全に心が癒えた訳でもないけど、彼を思い出す回数は確実に減っていた。

こうやって忘れていくのかな、なんて少し感傷に浸りながらも、前に進んでいる自分を見つけてホッと一安心。


最初は本当に忘れられるのか、次に進めるのか、不安だったけど、やはり人間は強いもので、必死に毎日を生きていく中で順応していく。


失恋したのは大学3年の2月。

就職活動の真っ只中だった。


だからどんなに辛くても、笑顔でいなきゃ行けなかったし、誰とも話したくなくても、面接に行かなきゃ行けなかった。


周りからは大変だね、って言われてたけど、

考えてみたらそうでもなくて。

逆にやらなきゃいけないことに追われてたから、彼を徐々に忘れられたのかもしれない。



そして私は、さらに積極的・行動的になった。

就職活動をしながら、毎日のように友達・先輩達と遊び歩いた。

何かをしていないと思考が止まってしまう、というのもあったが、少しでも新しい出会いを作りたかったのだ。

そして何よりも、自分の恋愛を笑い話にすることで、完全な過去にしたかった。


それが私の忘れ方、だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る