第8話 自分のために

別れて、ちょっと時間が経って、みんなに励まされて、日常に戻ると、初めて気付くことがある。


それは、今までどれだけの時間とお金を彼に費やし、彼のことを考えていたのか、ということ。

もちろんちゃんと彼のことがわかっていなかったから、振られてしまったわけだけど。


でも、私は "好きだから" ずっと彼のことを考えていた。彼の好みに合わせてメイクも、服も、髪型も、変えていった。

彼へのプレゼント、彼とのデート、どれもすごく楽しかったのは事実。


ただ、気づいてしまったのは、本当に自分がしたかったのは、なんだったの?ということ。


私が着たかった服は?

私がしたかったメイクは?

私が食べたかったものは?

私がしたかったことは?


私が、がいつの間にか消してしまっていたのかもしれない。


でも今なら、できる。

私が、を考えても大丈夫なんだ。


そう気づいたときに、視界が開けた気がした。


私はどうしてあんなに彼を許せていたんだろう?

嫌な気持ちを押さえつけられていたのだろう?


自分でも不思議なくらい、彼しか見えていなかった。

好きだから、じゃなくて、嫌われたくないから、だったのかもしれない。失いたくないから、だったのかもしれない。

恋や愛ではなくて、ただの執着だったのかもしれない。


私の気持ちを、私もまだわからないし、あの時の気持ちはわからないままなんだろう。

でも、これがきっと私のダメなところ。


しっかりと、自分を持つこと。

しっかりと、自分の足で立つこと。


今はもう私のために私は生きられるんだから。

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