幕間 失恋前夜

失恋から遡ること、10数時間。


私はとびきりのショックに見舞われる。


「明ちゃんに、言わなきゃいけないことがある。

…この前の飲み会ですごい酔っぱらっちゃって、俺、キスしたみたい…。」


突然の浮気の告白。

どうだろう、確かにキスごときで浮気か、と思う人もいるかもしれない。気持ちがそっちに向いているか、っていうのも気になるところではある。


「でもほんとにあの子の事好きじゃないから。」


そういった彼は悲しそうな顔をしていた。


私はというと、もちろん泣いたし、もちろん激怒した。彼の酒の失敗はこれが最初じゃない。

キスまでいってしまったのは初めてだけど、私が傷つけられたのは何回もある。


そのたびに怒って、反省して、を繰り返した。


いま思うと、こういう所も合わない所だったのかもしれない。

私がそういうことに対して不寛容だった所、彼が酒を飲むと女癖が悪くなる所。

冷静になってよく考えたら、合うはずがなかった。


それでも、彼のそばにいたかった私は、許すことを決意した。

でも周囲に言わずにはいられなかった。SNSで直接的ではなくとも、落ち込みを発信した。


きっと私のこういうところが良くなかったんだとは思う。傷ついても、落ち込んでも、大人になって、自分の中に閉じ込めておくこと。

そういう面でまだまだ子どもで、まだまだ足りないところだった。


浮気をした、そのこと自体も辛かった。

でも今考えると、彼も辛かったのかもしれない。


すべてが終わってしまった今、何を考えても「たられば」で、何も生まない。それは分かっていても、申し訳ない気持ちや、後悔はいっぱい湧き上がってくる。


だけど、それで自分を追い込んでしまっては、本当にダメになってしまうから。

今まで頑張ってきたこと、浮気を許そうとしたこと、そういう自分は褒めていこう。

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