第4話 むちゃくちゃなアルバイト


失恋当日から、私は塾のバイトに行かなきゃいけなかった。


気分は最悪、心は苦しいし、食べ物だって受け付けない。常に吐き気と戦っていた。

それでもやっぱり、失恋ごときで仕事を休む気にはならなかった。私が私じゃなくなる気がした。

こういう真面目で、頑張るところは頑張れる、そんな自分を挫けさせたくなかった。


生徒に勉強を教えていても、思い出してしまうのは彼のこと。

彼がいたから辛い時も頑張れたのかな、なんて思うと自然と涙が出てきてしまう。


授業中も何度泣きそうになったか。いや、泣いていたのかもしれない。


二時間目の生徒には、悪いと思いながらも

「先生、今日振られちゃったんだ。」

なんてポツンと言ってしまった。生徒は驚いたみたいで、なんて声をかけたらいいのか、まさにそんな感じだった。

困らせることなんてわかってたけど、口をついて出た。


そんな生徒だけど、帰り際ぼそっと

「頑張ってください…」

なんて言うもんだから、ほんのちょっとだけ、あったかい気持ちになれたよ。ありがとう。


どれだけ頑張ろうと思っても、ミスは増えるし、気分だって上がらない。そりゃそうだ、失恋したんだもん。


バイトに行って、とりあえず仕事をした。

それだけだけど、自分を褒めなきゃやってられない。


今まで辛いことを頑張れたのは、彼のおかげだったのかもしれない。

でもこれからは、自分のために辛いことだって頑張らなきゃいけないんだ。


自分のために、頑張っていこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る