02:長弓超克
「
――端的に言えば「
軍議にてフランス軍の
「名前などどうでもいいさ。イングランドが赤である以上、それに抗うのはフランスを示す青であるべしと思ったまでの事。滞りなく怨敵を討ち果たし、斯くてしめやかに帰還しよう」
だがそう告げて冷笑を浮かべるジルを、なるほど青だなとフランは見つめるう。確かに血を啜った後のジルは、紅蓮の吸血鬼とでも言った熱気を帯びているが、普段のソレは青白い頬の長身痩躯。だから由来はどうであれ、フランは中々に似合うネーミングだと得心し頷いたのだ。
「ま、仮面を被るにせよ何にせよ、マーシャが表舞台に立つって事はないでしょうから、安心して下さい。主に兵科の指導にあたるのはこのボク、天才
片やフランもフランで、目隠しの為のペストマスクを持参していた。当時
「相変わらず、屍を
而してマスクを被るフランを一瞥するジルは、忌々しげに毒づく。空気感染を防ぐ為に覆われた、
「そう言わないで下さいよマーシャ。ボクだって、ボクの可愛い顔を好き好んで隠したい訳じゃあないんですから。都合上兵士たちの訓練は必要不可欠ですからね。まあ止むを得ません」
マスクを付けたまま胸を張るフラン。無論闇討ちだけでも一定の戦果を見込める自負はあったのだが、
「魔術の類を吹き込む訳ではあるまい。どうするつもりだ?」
ここで至極ごもっともなご質問のジルに、
「
自らのくぐもった声が嫌になってマスクを外すフランは、さもしたり顔で返す。論理的で――、とどのつまりは、普遍性のある魔術こそが科学。万人に理解しうるよう体系化された
「
しかして聞きなれないとばかりに眉をひそめるジルに、仕方がないなとフランは説明を試みる。力だけは増したとは言え、やはりおつむの程度は雲泥の差だ。――最も急場の突貫工事にしては、随分よくやっていると称賛の無い訳でもないのだが。
「マーシャも投石機、或いは射石砲ならばご存知でしょう。城壁を穿ち、石塔を打ち崩す攻城兵器。
つかつかと歩きだすフランは、指で砲の動きを真似ると、バンと撃つ仕草をする。論より証拠、そして実践こそが無二の手ほどきだ。
「このように、移動し、しかる後に敵を撃つ。さしものイングランドの弓兵連中も、これにはひとたまりもないでしょう」
なんとは言え、
「――確かに。これまでの攻城兵器の欠点は、移動にせよ設置にせよ、とかく時間のかかる事だった。これを
腕を組むジルに、そろそろ頃合いとばかりに、フランは褒めて褒めてと詰め寄っていく。マスクを外したのは正解だった。なにせアレを付けていては、ジルと口づけを交わせないのだから。
「こう見えてもイタリアから渡ってきたのがボクですからね。かの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの遺産に触れている辺り、
仕方がないといった表情のジルを理解しつつも、暫くは指導員として真面目にレクチャーせざるを得ない身の上だ。ここぞとばかりに甘えておこうと、フランは全力でジルにまとわり付く。
「まったく流石だよ。まるで知識の
その言葉に股間が濡れるのを感じたフランだったが、さしあたっては
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