06:朝餐肉林
翌朝、小鳥の
「そろそろ……力を試すべき
かくて召使に掃除を任せたジルは、朝食を摂るべく広間に向かう。人外の力を手にする為に投じた半年。フランに頼み込み、実戦の演習を段取って貰うべきかも知れない。そう思いつつジルが食卓に至る頃には、机には既に料理が並び、芳しい香りが辺りに漂っていた。
「おはようございます、マーシャ」
夜とは代わり、メイド服姿で恭しく一礼するのはフラン。並の女なら壊れる暴力を振るわれながら、翌朝には平然としていられるのも、彼女の
「おはよう。今日も随分と
見回す限りに、肉切れが十皿はある。それから鮮血を並々と注いだグラスにボトル。
「はい。マーシャのために、ボクも一生懸命、丹精込めて作りました」
最も
「そうか……コックたちには礼を言っておいてくれ」
とまれこの不快にして面倒な作業の一連を請け負うのがフランの影武者たる老翁の仕事なのだが、ここの所は分量が増え処理が追いつかず、ついに新しいコックが加わったらしい。しかして裏方の人事全般はフランに一任している手前、ジルとしては介入の仕様も無ければ、その人物の顔すらも知らない始末だ。なんでも魔女と獣人とは聞く所だが、自らも人外に成り果てようとしている今、さしたる興味の持ちようも無い。
「――はい。きっと彼らも、マーシャの言葉を嬉しく思う事でしょう」
だからジルは、先ずはと言うべきか。こちらはこちらで、フランがせっかく用意してくれた料理に
* *
「うむ。濃厚でとろけるような舌触りだ。誰の何処の、とまでは問わないが」
「ふふ……若々しい
かくて広間の長いテーブルに座るのは、ジルとフランの二人だけ。地下を含む外法の領分は、今や全てをフランの手勢が取り仕切っている。下手に一般人である召使共を巻き込んで、のちのち足元を
「――あの後で、か。元気だな、フランは」
「マーシャの熱いの……沢山貰っちゃいましたから」
傍目には和やかな会話だが、互いに飲み交わすのは人の血。かつてはその場で調達する必要のあった生き血だが、新しい調合師のおかげだとかで、最近は多少の備蓄が効くらしい。――或いは単に、身体がそういうものに馴れてしまった可能性も否定はできないが。
「それで今日は、どうする? そろそろ私の力を試したいのだが」
「良い機会だと思います。ならボクはちょっと
くすりと微笑むフランの銀髪が、陽光に煌めき眩しく光る。こうして見る限りでは、病弱で薄幸な良家の息女とでもいった風合いなのだが、実態は死体人形だというのだから世の中は分からない。
「分かった……では昼過ぎにまた会おう。美味しい食事だった。ありがとう」
「えへへ。マーシャにそう言って頂けて、ボクは嬉しいです。それじゃあ、午後」
口元を
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