第4話

リサに奥側のソファを譲ると、彼女は僕の真正面から少し位置をずらして座った。4人掛けのテーブルで二人向かい合う。


「ええと、はじめまして……って言うのも、ちょっと変な感じだね」


リサはくすりと笑う。


「そうですね。もうかれこれ4ヶ月位ですか。ソウタさんとやり取りするようになって」

「うん、それくらいになると思います」


少しの沈黙。

何か話を振らないと、と少し焦る。


「「あの」」


かぶる。

なんだろう。青春の匂いがする。


「どうぞ」

「いや、リサさんからどうぞ」


また少し沈黙。

おずおずと、リサが「じゃあ……」と口を開く。


「どうして今日、私と会ってくれたんですか?」


え、もうそんな直球な話題なの?もっと天気の話とか最近読んだ本の話とか当たり障りのない雑談しないの?


「いや……そんな深く考えてたわけじゃ……。ただ、Twitterでやり取りしてて、いい人そうだな、と思って。これまでお話してて楽しかったですし」


さすがに「君が手首を切って血を流すところを見せてくれるんじゃないかと期待して」とは言えなかった。


などと考えている僕と反対に彼女は顔をほころばせて矢継ぎ早に話し出す。


「そうですか。私と話してて楽しかったですか。私もです。ソウタさんとやり取りするの、いつも楽しくて、早く学校から帰りたいな、って毎日思ってました」

「DMでお話したと思うんですけど、私、学校で気の置けない友だちっていうのが、ほとんど、いなくて」

「だから、学校の話とか、お話できるのってソウタさんくらいで」

「最近はソウタさんとのTwitterが楽しみで、楽しみで」

「それで、思い切ってソウタさんに会えないか、って聴いてみたんです」

「だから、今日は来てくれて、とっても嬉しいです」


お、おお。思ったよりぐいぐい来るな。

ただ、そんなふうに言われて悪い気はもちろんしなかった。

これをきっかけに話が弾みだした。もともとTwitterでどんな学校生活を送っているか、どんな本を読んでいるか、どんな音楽を聴くか、なんてことはお互いに知っていたのだ。そうしたベースがあるので、話題には事欠かなかった。


せっかく横浜に来たのに、日が落ちるまで僕らはカフェで話し込んでいた。

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血が好きな少年の話 戸田 佑也 @todayuya

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