エピソード59
###エピソード59
午前12時30分、山口飛龍(やまぐち・ひりゅう)は別の場所へと到着した。
公園と言う事なのだが――周囲の状況をみると、縁日でも行ったかのような形跡がある。
「逃げられたか――」
山口がジークフリートを撃破したタイミングからわずか数時間で撤収したとは考えにくい。
おそらくは、数日前にはガーディアンが来る事が知らされていたのかもしれないだろう。
実際、ガーディアンの目撃例がこの近くであった事から――ここで何かを行っていた人物が、危険を感じたのかもしれない。
「しかし、これを摘発出来ない事には――ARゲームのチート問題も類似案件と叩かれかねないだろう」
山口が今回の件を発見したのは、1年か2年ほど前のアミューズメントパークにおける事故の記事だった。
【バンジージャンプ中に事故? 原因は調査中】
ARゲームでもジェットコースターなどに代表されるマシンを再現できる技術は存在する。
しかし、VRジェットコースターやリアルのジェットコースターなどで事故が起きている以上、風評被害が出かねないと言う事でプロジェクトは凍結中――のはずだった。
「数週間前辺りから、違法なARゲーム筺体を目撃したという情報があったという事だが――」
山口が周囲を調べていく内に、太陽光発電のシステムで何かが使われた形跡を見つける。
どうやら、この太陽光発電に接続する形で電力を供給していたようだが――接続されていたのが何なのかは、データが改ざんされていて詳細不明だ。
「機種だけでも分かれば、メーカーに直接連絡する事は可能だが――」
残念ながら、その表記さえも識別出来ない為に何が接続されていたのかは不明だ。
一体、ここで何が行われていたと言うのか? 仕方がないので、周辺住民に尋ねようとも考えたが――住民は非協力的だろう。
ARゲームで町おこしと言う事にも猛反対していた勢力の存在もあり、下手に騒ぎを大きくしたくないと言う事があるのかもしれない。
周辺住民の中には警察に相談している人物もいるのかもしれないが、警察の方も治外法権に近いようなARゲームには非協力的だ。
そう言うシステムにしたのは、自分にも責任がある。ある意味で裏目に出たと言ってもいい。
ARゲーム課が下手に事件を大きくしたくないと言う事で警察の介入を最小限にしようとしていた事も――このシステムが生まれた経緯なのだが。
『アイドル投資家だと? それをお前が言うのか? 元架空アイドルの――』
ふとジークフリートの発言を思い出し、その場で頭を抱える。
あの時にジークフリートが言おうとしていた事は、自分が武者道を立ち上げる前の事だろう。
今は、この事実を知るような人間も少ないかもしれない。しかし、あのアイドルは解散こそはしていないが――ネット炎上でファンが二分された。
現在は様々な派生作品もあり、またファンの数は増えつつあるのだが――自分以外にも卒業と言う名の離脱を決めた人間はいる。
山口は、それを芸能事務所AとJが独占しようとしているコンテンツ流通――。
それを何とかする為に武者道を立ち上げ、コンテンツ制作サイドとして芸能事務所の暴走を止めようと考えたのである。
しかし、彼の考えはアイドル投資家からは既に見抜かれていたのだ。
そうでなければ、ARゲームにおける不正ツールやチートの拡散――これらの事件が、ここまでの規模で報道はされないだろう。
同刻、北千住の某所でメンバーが揃うのを待っていたのはアキバガーディアンのメンバーである。
「そろそろ――」
「これ以上待てば、向こうにチャンスを与えかねない」
「しかし、リーダーが到着しなければ――」
周囲のガーディアンも誰かを待っており、その人物が来るまでは待機している状態だ。
彼らの装備はARウェポンであり、周囲には既にARフィールドを展開済みである。
警察も手を出せない理由には、アキバガーディアンがARフィールドを展開した事にあった。
つまり、彼らは芸能事務所潰しを、いわゆるひとつの『ゲーム』として扱っているのだろう。
ある意味でも彼らのやっている事は、カードゲームアニメに代表されるようなアレを再現していると言ってもいい。
これに関しては警察も犯罪者の逮捕をゲームとして楽しむと言う方法には疑問を持っている。
しかし、彼らが死者を一切出さないで犯人を確保するというやり方は――警察にも真似は出来ないだろう。
そうした経緯もあって、警察はARゲーム関係の事件にはノータッチを決めた。これは草加市以外にも適用される。
例外があるとすれば、その規模が日本の危機に類するケースだ。
海外にはARゲームの技術が流出した形跡もないので、このケースが起こるかと言われると0%に近い。
0%と断言出来ないのはアキバガーディアンも把握している為、こうした事例はいつか起こると懸念しているのだが――。
「まさか、あちらの芸能事務所にもフィールドが展開されているとは――来るのが分かっていたのか?」
ようやく合流したのは、橿原隼鷹(かしはら・じゅんよう)である。彼が使用したのはホバーボード型のARガジェットだ。
このガジェットは変形する事でパワードアーマーに変形するのだが、これを使わずに決着する事を望んでいる。
「どちらにしても、向こうは何かしらのARゲーム技術を入手したとしか――」
ガーディアンの一人が橿原へ現状報告を行う。フィールド展開は、こちらが行う前に向こうが既に行った物らしい。
つまり、ゲームジャンルがFPSになっているのは――決定権が芸能事務所側にあった為かもしれないが。
「こちらも総攻撃で仕掛ける。ARゲームのシステムが適用されている以上、ゲームルールに反する行為以外は各自で対応する事だ!」
橿原の指示を受け、遂にガーディアンメンバーが突入を開始した。
この様子に関してはネット上でも中継され、日本全国の視聴者が見守る展開になったのである。
###エピソード59-2
午前12時40分、お昼のワイドショーでは速報テロップで事件を伝えたのである。
【大手芸能事務所でドラッグ密売容疑で強制捜査。歌い手や動画投稿者が所属】
当然のことだが、このテロップはあるテレビ局では流されていない。国営放送でも流れていない。
【芸能事務所B、コンテンツ流通の違法行為により摘発される】
明らかに何かを伝えていないと言うよりも、視聴率稼ぎがあからさまなテロップを打ったテレビ局が――という具合だ。
これに対し、ファンからは別テロップで放送したテレビ局に抗議のメール等を送ると言う展開となる。
それをARゲームに対する批判としてまとめサイトが取り上げ、芸能事務所AとJのアイドルを信じれば救われる的なカルト集団的な方法が――と言うループが行われたという。
これに関しては広告会社や芸能事務所A及びJ、カリスマ超有名アイドル投資家等が仕向けたのは火を見るよりも明らかなのだが――。
これらの炎上に関するレポートのあるにはあるのだが、事実が歪められている可能性もあるのに加え、不適切な表現を含む為――ここでは割愛する。
「やはり、こうなったか――」
ワンセグ放送で一連の報道を知ったのは、山口飛龍(やまぐち・ひりゅう)だった。
大規模なテロ行為が芸能事務所A及びJ主導で起こり、それが本当にリアルウォーに変化したとしたら――クールジャパンどころではない。
何としても、一連の事件を歪めようとする犯人を見つけなければ――と。
「特定芸能事務所にだけ無限の利益が与えられるようなノウハウ――それは賢者の石と同義だ。正当な報酬とは言えない――それこそ、不正ツールやチートと――」
山口はふと口にした言葉に――何かヒントがあると考えた。
超有名アイドル商法が賢者の石と同じと言うのは、アカシックレコードの受け売りである。
しかし、それを『正当な報酬』と言及しているようなレポートや記述はない――。
それは暗黙の了解的に超有名アイドル商法が『チート』と明言化しているのは間違いないだろう。
「デンドロビウムのチートキラー、もしかすると――」
山口はタブレット端末のメールソフトを開き、即興で文章を打ち始める。
その内容は武者道へのスタッフに対するメッセージ的な物だが、その内容は単純明快な物だった。
【アカシックレコードと言うワードを検索せよ】
おそらく、山口はアカシックレコードの正体は掴んでいない。
しかし、その単語には大きな意味があるのは否定できないとも思っていた。
だからこそ――つぶやきサイトでも言及され始めたと見ていたのである。
北千住の事務所、そこでアキバガーディアンのメンバーが目撃したのは衝撃の光景だった。
「なんだ、これは!?」
突入部隊のリーダーと思わしきパワードスーツ姿の男性は、本丸と思われた部屋を見て驚きの声を上げる。
その場所は会議室だったと思われるのだが、大体の荷物は全て持ち去られた後だった。
更には折りたたみ式の机とパイプ椅子、何かを売っていたと思わしきスペースもあるのだが――テーブル配置には疑問もある。
しかし、周囲には監視カメラが設置されている形跡はなく、罠が仕掛けられている様子もない。
「まさか、テレポーターや自爆装置がある訳では――」
別のガーディアンが冗談交じりに言うのだが、ジョークとしては笑えないネタである。
自爆装置と言っても、物理的に建物が爆発するような物ではない。そんな物を仕掛けていれば、爆破処理班を呼ばなくてはいけないだろう。
あくまでも、これはARゲームであり、リアルウォーではないのだ。
「これは――!?」
別のメイド服を着た女性ガーディアンが、無造作に置かれていた本を手に取った。
爆発物トラップの部類ではないのはARバイザーで確認済みの為、本のページをめくったのだが――。
その中身を見た女性ガーディアンは固まった。本の中身を見ての反応かもしれないが、周囲のガーディアンも困惑している。
「他にも雑誌の部類がないか調べろ! もしかすれば、密売していた物の正体かもしれない」
橿原隼鷹(かしはら・じゅんよう)は他のエリアにも同じような物がないか調査するように指示、それを回収するようにも命じた。
その支持は見事に的中する事となり、別の類似エリアでもダンボール箱を発見したという報告が入る。
調査に時間をかけてしまった関係もあるのだが、橿原はビルの外が慌ただしくなっている事に違和感を持った。
ARゲームを見に来た野次馬にしては、どう考えてもテレビ局のスタッフが紛れていたり、中には週刊誌の記者等も存在するのだが――。
【大手芸能事務所でドラッグ密売容疑で強制捜査。歌い手や動画投稿者が所属】
このテロップを番組経由ではなく、つぶやきサイト経由で確認したガーディアンが橿原に駆け寄ってきた。
彼の慌てっぷりを見ると、ARバイザーで表情は確認出来なくても緊急要件であるのは分かっている。
「どうやら、このビルは囮である可能性が――」
これだけのゲームフィールドを展開しておきながら、まさかの囮だったという発言には耳を疑った。
特に橿原は別人経由で極秘情報を手にしていただけに――彼に騙されたとも考えるだろう。
「囮と言うのは早計だが、資料の確保はできた。地下ルートから撤退を行う」
橿原が地下ルートでの撤退を指示、ARバイザーにも地下ルートの最短距離が表示された。
北千住もそうだが、地下は主にARウェポンやARガジェットの運送をメインとした地下道が整備されている。
ここから地上にいるマスコミ等に気づかれず、別エリアへ向かう事も可能なのだ。
これらに関してはアキバガーディアンを含め、一部勢力しか知らない特別なルートでもあり、テレビでも企業秘密を理由に非公開としている。
地下ルートは自然災害時の避難経路等でも運用される為、市役所の人間が知らないと言う事はないと思うが――実物を見た事あるのは一握りと橿原は考えていた。
「ここが囮だとすれば、他のガーディアンも――?」
別のアンテナショップへ繋がるルートに出る直前――ARスーツを装備した謎の一団が出口の前に立ちふさがる。
これに関しては完全に想定外と言えるだろう。あれだけの激闘の末、手に入れた資料を他の勢力に取られてしまうのか――とも考えた。
『橿原隼鷹――完全に利用されたな、あの人物に』
目の前に姿を見せたのは青騎士ことスレイプニル。
つまり、都市伝説となっている本物だった。これには橿原も驚きを隠せないと言うよりも――。
「スレイプニル、お前もか! 芸能事務所と手を組み――ARゲームをオワコンにしようとしているのは?」
橿原は勢いでガーディアン内でも禁句とされているNGワードを口にしてしまった。
これを口に出せば、他のまとめサイトでコンテンツが歪んだ意味で拡散し、それこそアンチによる活動やまとめサイト勢にも燃料を与えてしまう。
更には、芸能事務所AとJが持っている賢者の石とも言えるアイドルビジネスのノウハウ――その価値を高める結果を生みかねない。
『私は君たちの言う青騎士ではない――』
青騎士の使うボイスチェンジャーをカットし、スレイプニルはARメットを外した。
しばらくするとARアーマーもCGの様な演出で消滅し、そこにはサイバー忍者を思わせる女性の姿があったのである。
「お前は――ハンゾウ? いや、違うな――瀬川アスナ」
橿原は目の前の人物が向こうではハンゾウと呼ばれている人物だと確認した。
頭に血が上っていた関係もあり、それこそマスコミが偽装した青騎士とも思っていたらしい。
「その名前で呼ばれるのもアカシックレコード的には運命と思うけど――悪くないわね」
ハンゾウの正体、それはアカシックレコード上でも特別な存在と言われている瀬川(せがわ)アスナだったのである。
彼女は改めて、メガネを取り出してかけ直す。そして、橿原にあるデータを転送した。
そのデータの正体は、ダンボール箱の資料の正体を示すあるカタログだったのだが――。
「これを渡して、どうするつもりだ?」
「それをどう扱うかは自由よ。貴方達にだけ、情報を開示しないのは不公平と判断しただけ」
その後、瀬川の姿はなかった。一連の部隊も既に撤退しているようだ。
そして、橿原は転送されたデータを開くと、謎の文字列等に頭を痛める。
「これって、フジョシの――」
その一言を放ったのは、先ほどの本を見て赤くなっていたメイド服のガーディアンである。
どうやら、あの場で売られていたのは歌い手や実況者の夢小説だったようだ。
しかも、人物名は判別出来ないようにしている物もあれば、全く隠していないような物もあったのである。
「なるほど。これをドラッグ扱いとして摘発し――」
橿原は何となくだが、あのメールを出した人物の意図を理解した。
既にマスコミや広告会社等が炎上させている為か、一足遅い気配もするのだが――。
###エピソード59-3
橿原隼鷹(かしはら・じゅんよう)が北千住のアンテナショップへ何とか到着し、そこで改めて渡されたデータの解析を行う。
「こう言った小説が普通に拡散し、ネット炎上させているのか――まるで、1ジャンルとして認識させようと言う気配も感じる」
橿原は完全に呆れるしかなかった。表に出してはいけないジャンルと言うのもあるはずなのに、それを認識させてどうしようと言うのか?
それこそ、芸能事務所AとJのアイドル以上に認識させて神コンテンツとするつもりなのか?
しかし、それを普通に認めさせるような風潮ではないのは火を見るよりも明らかであり、肖像権等の観点からしても――非常に危険だろう。
一歩間違えれば、こうしたコンテンツの流通はアルストロメリアが完全に根絶すると言いかねない。
アルストロメリアがこのジャンルにまで手を伸ばすかと言われると、疑問点が残るのでスルーされる可能性は大きいか。
「ここまでくると――」
橿原は更に別の考えにも到達したのだが、それを口にすれば――危険思想と認識されて排除されかねない。
芸能事務所AとJが考えるコンテンツ流通に関しても理解できないし、アルストロメリアが想定している物に関しても不明なままだ。
本当の意味でコンテンツ流通とは、そもそもネット炎上と紐付けされるような芸能事務所AとJの売り方は、まるでリアルウォーを連想するかもしれない。
「デスゲーム要素を排除したリアルウォーを、芸能事務所が広告会社等と手を組んで展開するのか? コンテンツ市場で?」
やはりというか、彼もリアルウォーと言う単語に辿り着いた。
この単語自体、ネット上で大きくは拡散していない。単純に被害妄想と言う事で切り捨てているのが現状だからか。
しかし、それでも世界大戦よりは現実味がある単語なのは間違いなく――。
【芸能事務所2社と他のコンテンツ企業で戦争を起こすのか?】
【さっきの芸能事務所が強制捜査を受けたというニュースを見ただろう? そう言う事だ】
【芸能事務所2社によるディストピアは、それこそWEB小説だけの世界ではないのか?】
【あのサイトに載っていた小説はフィクションじゃなかったのか?】
【あれがアカシックレコードと言うのか?】
ネット上では、一連の事件を受けての反応が拡散されている。
その中でもアカシックレコードに言及するつぶやきも存在し、その単語がまとめサイトにも載りつつあったのだが――。
午後3時、谷塚駅近くのアンテナショップに足を運んだアルストロメリアは一連のネット上にある記事を見て――少し驚いて見せた。
『想定外の動きをするが――まだ、こちらで修正可能の範囲か』
運営側も反応が遅く、もはや自分の手で下さなければ遅いと言う所まで――コンテンツ市場の危機は迫ってしまったのである。
彼女はリアルウォーに関しては把握しているものの、それに言及すらしない。戯言と切り捨てている訳ではなく、別の理由で。
アンテナショップと言っても、彼女はガジェットの整備を行う為に来店した訳ではない。
その彼女は、ARバイザーでウェブサイトのいくつかをチェックした後、ある記事の存在に気付いた。
『瀬川――アスナ?』
瀬川(せがわ)アスナ、それはハンゾウと名乗っていた人物の名前らしいが――そちらとは別の何かを彼女の名前に感じていた。
かつて、アカシックレコード上で『コンテンツ流通を変えた人物』と言う記事で彼女の名前を見た事がある。
その当時は名前を見ただけで、彼女が何を行った人物なのかを調べるような事はしなかった。
彼女としては興味が全くない――と言う事なのかもしれない。
『伝説級のプレイヤーという事は、サイトでも書かれつつあるが――』
瀬川が実は別の小説等では最強のプレイヤーとも言われている。
完全無欠や絶対無敵という様な物ではないのは間違いないが――弱点を安易にばらすようなまとめサイトは存在しない。
同時刻、ARスーツを含めた装備をしていないジャック・ザ・リッパーが、別のARフィールドに姿を見せた。
『要するに、泳がせたという事。あの芸能事務所に求めるのは――自分達の商法が全て間違っていたという謝罪よ』
アルストロメリアの言葉を、彼女は唐突に思い出した。
ある勢力は芸能事務所AとJが荒らし尽くし、更地となったコンテンツ市場を再生させる――と明言した。
更に別の勢力は芸能事務所2社が国会や広告会社とのマッチポンプマーケティングが終わりを告げようとしている――そう拡散していた。
また別の勢力は芸能事務所2社の都合だけで動く歴史に終止符を――そう断言し、動画サイトでは該当発言の動画が100万再生を記録する。
「アルストロメリアは謝罪を求めている一方で、他の勢力は芸能事務所2社を消滅に追い込むだろう。そして、黒歴史と認定させ――闇に追いやる」
ジャックはペットボトルのコーラを口にしつつ、センターモニターの中継を見ていた。
そこでのレイドバトルは、プロゲーマーやランカーから見れば――ままごと遊びにも見える可能性はある。
しかし、誰もが最初からプロゲーマー並の実力を持っている訳ではない。
それこそ、異世界転生や異世界転移で最初からチート能力を持っているようなWEB小説を思わせる展開は――アーケードリバースには存在しないと言ってもいいだろう。
「それ程に超有名アイドル商法が賢者の石と呼ばれ、どれほどの損害や風評被害を他のコンテンツに与え、100万人以上のFX破産を生み出したのか――」
FX破産に関してはまとめサイトに書かれたネタかもしれないが、その例えが正しいという程にコンテンツ市場にダメージを与えたのは事実である。
芸能事務所の謝罪だけでは生ぬるい――と考える人物に共通するのは、アイドル投資家を含めて異世界へ追放するというネタ発言が飛ぶほどだ。
さすがにデスゲーム禁止という世界の中では、ネット上でも過激発言をすれば警察に即逮捕されると把握しているのだろう。
つぶやきサイトの、こうした検閲等が一連のディストピアを連想しているというつぶやきもあるほどだ。
「この世界は――コンテンツ市場はどうなるのか?」
中継動画を注視しつつ、ジャックはこれからのコンテンツ市場がぶつかるであろう壁の存在を――予言していた。
その壁が姿を見せるのは――レイドバトルの開催中であるとも考えられる。
つまり、それが意味するのは――炎上マーケティングだ。
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