倒してイイノ?4話 海に入って

海に入って


「あっちの島まで競争だよ。いい? 二人とも、賭ける物はおやつだよ」

と皐文ちゃんが、詩織ちゃんと、エスキさんに勝負を挑んでいる。

「いいでしょう。あとで泣きついても知りませんよ」

「あたしが勝つにきまってるわよ。やめるなら今よ?」

そんな三人を、海につかりながら見ていると、後ろから水をかけられて、

「冷たい! 誰かな?」

振り返ると、そこにはニコッと笑った、美智さんの姿があった。

「もう大丈夫なのですか? それと、あの時はありがとうございます」

「どの時かしら?」

「私が気を失っていてその後飛空船に乗り込んだ時です」

「ええ、別にいいわよ。それにあれはあなたを助けたわけではないし。それにしても詩織様があのように遊ぶとは予想外ね、おめでとう。楽しそうで何よりね」

「へ? 助けたわけでは無いって……」

「あの時、海岸に打ち揚げられていた、少女がいたのよ。フードで顔は分からなかった、そして、フードもなぜか取れなかったのよ。中覗いてもモザイクみたいでね、けど、黄色いフードだったわ。私は彼女を助けるために力を使って、倒れたのよ。それを教える必要もない、と考えていた詩織様は、あなたを助けたことにしたのよ」

「へ? どうして?」

「多分、どうして助けたのか、自分もわからないからじゃないかしら」

「?」

「後から聞いてみたら、皐文だったわその助けた彼女は、まあ皐文が助かったのだからいいんじゃないかしら?」

「そうだね」

そこに、島津さんが来て、

「おい、もうそろそろ、船に戻ってくれないか。もうすぐ出発したい」

いつの間にか夕暮れになっており、詩織ちゃん達が帰ってきていた。

「……それじゃあ行こう」

と神奈ちゃんが歩き出す。それに私達も続いて、

「あ、そういえば、詩織ちゃん。皐文ちゃんとエスキさんと競争した水泳はどれぐらいで帰ってこれたの?」

「1分です」

「はやっ」

船に乗るが、しかし、詩織ちゃん、美智さん、ライル姉妹、エルピスさん、島津さんは乗らずに、

「ここから私達は、大陸に渡ろうかと思います。連絡先は前に渡した通りです。また戦争に参加しながら生計立てますので。ついでに、沈んだ都の王は、私の雇い主の元に連れていきます」

「俺もこの子らだけでは心配だからな。ついていく」

私はなんて言えば良いかわからなかった。

「またね、詩織、プリマ、エスキ、美智、サターン。また遊ぼうね」

と皐文ちゃんが大きく手を振り、

「またね~。今度は詩織ちゃんと共闘したいな~」

代美ちゃんはお辞儀をして、

「……じゃあ」

無愛想ながら神奈ちゃんが手を振った。

何か言わないと、言わないと!

「珠樹さん、あなたはサモンエッグ無しでも戦えるようにしておかないと今後大変になるかもしれません。例えばサモンエッグを盗まれたりしたら、又は大気中の魔力が無くなったら……だから体内魔力で戦えるように頑張ってください。また会いましょう」

「……! うん!また会おうね!」

彼女たちも船を出した私達と違う方向に向かって。

「あ、おやつ忘れてた!」

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