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──夢や、おまへんで……。
モチャモチャした関西弁に、三人はギクリと身を強張らせた。
あの〝声〟だ!
──『蒸汽帝国』が結末がないままアニメ化されましてん。仰山のお人が、木戸はんの『蒸汽帝国』ちゅう世界を共有して、この世界が生まれましたんや。このまんまだと『蒸汽帝国』は未完成になってまう。そりゃ敵わんちゅうこって、あんたらを呼び寄せたちゅう話しでおま。
「その関西弁をやめなさいよっ! あたし、これでも関西出身なのよっ! あんたのインチキ臭い関西弁を聞いていると、苛々しちゃうわっ!」
──ほな、失礼します。ほんでも、この口調、わいの地ぃやからしゃあないな。我慢しとくれまへんか?
洋子の怒りの爆発にも、蛙の面になんとかで、〝声〟は、しゃらっと言葉を続けた。
──あんたらにして欲しいのは、なんとか『蒸汽帝国』のストーリーに結末をつけて貰いたいんや。お願いでけまっか?
市川は仰天した。
「ストーリーに結末をつけろ? 馬鹿を言うな! それは木戸監督に言えよ!」
──その木戸監督はんが手ぇ上げてしまったさけ、あんたらに白羽の矢が当たったちゅうわけだす。
山田は宙を睨んで叫んだ。
「木戸監督ができないなら、なおさらおれたちにできるわけない! おれたちゃ、絵描きで、作家じゃないんだ!」
──あんたらしかおまへんのや。何しろ、『蒸汽帝国』の世界を一等、理解しておるのは、あんたらやからな。あんたら三人と、三村はん。新庄はんの五人で、ストーリーを続けて貰いたいねん。
市川は山田の真似をして宙を睨みつけ、叫んだ。
「どうやって? どうすりゃいいんだ?」
──何でもええ。あんたらのやりたいように、やりなはれ。何でもええから、ジタバタすれば、それがストーリーになるんや……。
〝声〟が徐々に遠ざかる気配がして、市川は慌てて喚いた。
「おい、待て! そんな無責任な……! それに、木戸さんは、どうなってる? なぜ、木戸さんの名前が出てこない?」
──あん人には、別の役目がおます……。
謎めいた口調を最後に、〝声〟はふっつりと跡絶えた。
がちゃーん、どしーんと重々しい機械音が戻ってくる。
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