第26話 気持ち

 これはあれだ、愛の告白というやつだ。

 それを理解して反射的に顔が赤くなった。

 告白……俺が? ……この俺が!?

 那月にはからかわれながら告白されたことあるが、まさかモデル級美少女の山田から告白されるなんて……!

 それに……


「今、私って言ったか?」

「あ、あぁ! 一世一代の告白に、うちと言うのは何かあれだったからな。私のが可愛さ出る気がするし……。で、どうなんだ!?」


 下から覗き込むように見てくる山田。

 可愛い、とても俺と釣り合うとは思えないくらいに。

 そんな美少女が今、何の取り柄もない妹好きのヤツに告白しているのか。

 叶美のヤツは俺のことを好きと言ってくれただろうか。

 たとえ言っていたとしても、それは男として、ではなく兄として好き……と、いうことだろうな。

 なら、山田の告白……どうすればいいんだ……!

 悶々と考える俺に、山田は付け加える。


「私、山田・カトリーヌ・ドゥクシは、世界……いや、宇宙一高梨浩介が好きだ!! はいかいいえで答えをくれ。付き合ってくれ!」


 頭を下げながら前に手を出す山田。

 この手を握るだけで俺は、美少女と付き合える。


 だけどさ……。


「俺は、妹の叶美が好きだ」

「知っている」

「俺は、山田と付き合っても叶美より好きになれないかもしれない」

「それも承知で告白している」


 山田は一切俺の目を見ることなく、淡々と答える。


「山田が宇宙一俺の事を好きなんだとしたら、きっと俺は叶美が宇宙一好きだ」

「……それなら、妹さんより可愛く、素敵な人になり、私の事を宇宙一好きと言わせてやる!」

「な……んで、俺のことなんかを……」


 さっきまで下げていた頭を上げ、怒りが高まったのか、声を荒らげる。


「確かに取り柄が少ないかもしれない。顔も平凡でモテるはずがない。なんて、思っているのか!? 浩介は那月にも好かれているんだ! そんな自分をモテないなんて言うなよ!!」


 息を切らし、ハアハアと呼吸している。

 そんな山田を見て、自分が今どんな立場なのかを知らされた。


「分かった。山田が俺の事を本気で好きだって事を」

「それじゃあ……!」


 目を輝かせる山田に、真剣な顔で告げる。


「俺は……山田とは付き合えない」

「え……」

「やっぱり、叶美を裏切れないわ」


 苦笑いを零し、でも、キッパリと自分の意見を告げた。

 気まづい……けど、ちゃんと言った。

 悔いはない……はず。


「そうか。振られたのか……私は。ありがとうな、真剣に答えてくれて。ちょっと、先に帰らせてくれ」


 そう言って走り去って行った。

 そんな山田の後ろをつける訳では無いが、ただ家が同じ方向だからそっちへ向かった。


 家に着くと、叶美が出迎えてくれた。

 手が濡れているところを見ると、たまたまトイレから出てきただけだろう。


「兄さん、なんで泣いてるの?」

「え?」


 そう言われ、目に手をやると手が濡れた。

 あれ……なんで……だろう。

 なんで涙が……?

 手で涙を拭いながら玄関に立ち尽くす俺に、叶美が抱きついた。


「か、叶美!? どうしたんだよ!」

「叶美はね、兄さんの味方だよ。どこに行っても叶美は兄さんが好きだよ」

「へ……?」


 素っ頓狂な声が出る俺に笑いかけながら、


「また後でね」


 そう言ってリビングへと入っていった。

 ……陰キャラは卒業出来たのかな。

 続いてリビングに入ると、父さんがいた。

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