第41話 神スキル「創造」で最強です

 夢を見ていた。


 ――ごめん。あんな戦争起こしちゃって……。


 それは心の底からの謝罪。


 ――本当は「魔界」も「神界」も、「魔王」も「神」も、魔族も天使も、みんな仲良くしたかったんだ。


 だんだんと鮮明になっていく意識は、それでも醒めることはない。


 ――だけど……俺に与えられたスキルがそれを許してくれなかった。


 僕は悔しそうに顔を歪める黒髪黒目の青年を見ていた。


 ――スキルは意地悪だ。


 そして、不思議なことに、根拠も何もないのに何故かそれが「終世の魔王」なのだと確信できた。


 ――「終世」は、僕の意思に関係なく世界を終わらせようとした。


 その話を聞いて、「終世の魔王」が悲しそうな、寂しそうな顔をしていた理由がようやくわかった。


 ――だけど、俺が本当に願っていたのは平和なんだ……。


 あの破壊を見た者は、この話を聞いても誰一人信じなかっただろう。


 ――「魔王」と「神」は同じような存在なのに、その二種族で殺し合うなんて悲しすぎる。


 でも、僕はこの言葉に確かな意志を感じた。


 ――だから……君にその意志を継いでほしい……。


 だから、僕は彼の意志を継ぐことにした。


 ――ありがとう……。


 「終世の魔王」の最後の言葉が響いた。


 ▼


「頼むッ!」


 目を覚ました僕は、生き残った「神」達全員の前で頭を下げていた。


「儂は別に良いぞ」

「私も良いと思うよ~」


 そう言って僕の言葉に賛成する長と「時神」に釣られて、ほとんどの「神」は賛成の意を示す。


 僕は今、「創世神」に決闘で勝ったら「神界」の長の座を変わってほしいと言っていたのだ。


「別にそれ自体は良いと思う。だが、長にだけリスクがあるという条件が気に食わん」


 ガタイが大きく、強力な威圧感を常々放ち続けているとある「神」がそう言って僕に反論した。

 彼は、僕が初めてここに来たときにはいなかったが、その他の場面では「破壊神」の次くらいに僕を目の敵にしていたやつだ。

 僕がこいつを説得するのは至難の業だろう。

 しかし……


「アーツにはこの戦争で大きな役割を果たして貰った。そこで、もともと何か報酬でも与えようかと思っていたのじゃ。それをこの戦いにするというのなら別にいいじゃろ?」


 最後、長は威圧的にそう言った。

 有無を言わせない口調に流石にその「神」も反論しにくかったのか、はたまたびびって声も出なかったのか知らないが、一言も発することなく黙って頷いた。


「じゃあ決定だね~。日時は後で決めよ~」


 「時神」が相変わらずののほほーんとした口調でそう締めくくった。


 ▼


「これから『創世神』対『創造神』の、長の座をかけた決闘を始めま~す」


 こんなときでも相変わらず間延びした声で、審判を務める「時神」がそう言う。

 そして、それと同時に周りが熱気に包まれる。


「「「「「わぁぁぁあああああああああ!!!」」」」」


 僕はこれまでの人生でここまで盛り上がっているのを見たことがない。

 そう思うほどの、物凄い歓声だった。


 僕としては僕、「創世神」、審判の三人だけのところで決闘をしたかったのだが、そうすると僕が勝っても「神界」の住民達が長の交代に納得できないだろうということで、このように大勢の前で戦うことになった。


「殺せっ! 殺せっ! 殺せっ!」

「あの調子に乗ってる野郎をぶちのめしてやってください!」


「俺達の長を嘗めるなぁ!」

「「「嘗めるなぁ!!!」」」


 どうやら観客席には僕の仲間はいないらしい。

 そう思ったときだった。


「アーくん頑張ってぇ!」

「アーツ、やっちまうのじゃ!」

「頑張ってください、アーツさん!」

「アーツさん! 応援してますよ!」


 必死に応援してくれている仲間達の声が聞こえた。

 本当に、いつもいつも僕は仲間達に助けられている。


「負けるんじゃねえぞ!」

「負けたらフェラリーは家につれて帰っちまうぞ!」

「負けたらお仕置きじゃぞ」


 どうやらライオット、ウィンデッド、リヴィアの三人も応援に来てくれたらしい。

 僕は内心で三人にも感謝する。


「じゃあ始めるよ~」


 「時神」のその一言で、弛緩していた僕の心は引き締まる。

 熱気に包まれて上がっていた周りの気温が急激に下がっていき、うるさいかった声援が全て意識の外に追いやられる。

 最早僕の眼には「創世神」しか映っていない。


「よ~い……スタート!」


 そして遂に戦いが始まる。


 「時神」の合図と共に僕は考えられる限りのスキルを使用して加速し、先手必勝! とばかりに「創世神」に突っ込んでいく。

 「身体能力強化」によって地面を蹴る脚の筋肉を強化し、「魔法適性(風)」で空気抵抗をほぼゼロにし、「魔法適性(火)」で蹴りの瞬間に足元で爆発を起こす。


 しかし、「創世神」は常人……いや、並みの「神」でも目で追えないほどのスピードで突っ込む僕の脇を通り抜けてあっさりと回避すると、「創世」と小声で呟く。


 そして、その声に反応するように「世界」の形が変わる。


 僕の足元の地面は大きく裂け、僕の足場はなくなる。

 さらには裂けてできた円形の穴の円周上の土が盛り上がり、鋭い刃になると僕に迫る。


 凶悪な包囲網から脱出するべく、僕は「魔法適性(風)」を器用に操って体をうかせると、そのまま「創世神」に再び突っ込んでいく。


 それは一見簡単そうに見えて、とても難しいことだった。

 もし回避が間に合わなかったら土の槍に体を貫かれていただろうし、風魔法の扱いを少しでも間違えていたら穴に落ちていっただろう。


 「外部干渉不可」では、元々あった土を作り替えてできた槍を回避できない。

 「外部干渉不可」とは言っても、地面の土には干渉できるようになっているのだ。そうでないと地面を駆けることすらできない。

 だが、だからこそ自然にあったものを作り替えての攻撃には弱い。

 「外部干渉不可」は名前からのイメージよりもかなり弱く、使い勝手が悪いのだ。


 僕はそのまま土の槍をくぐり抜けながら「創世神」に突っ込む……と見せかけて「魔法適性(光)」による目潰しを行う。

 そしてそのまま相手の視力が復活する前に「自動標準」から即死魔法を使う。


 死んでも後で生き返らせれば良いか。

 そう思って使った即死魔法は、そもそも「創世神」を殺すことはなかった。


 光の残滓が消えたいきいつもの視界が戻ったとき、僕の目の前には何も変わらない格好で立っている「創世神」がいた。


 少し僕は「創世神」を甘く見ていたのかも知れない。

 「創世」はそもそも「創造」の上位互換だ。

 恐らく「創世」を分割して引き継ぐときに、最も「創世」の特性を受け継いだのが「創造」なのだ。


 僕は「創世神」を「鑑定」する。


―――――――――

名 前:未設定

性 別:男

年 齢:301247

種 族:神

職 業:創世神

スキル:「創世」「アーツ攻撃無効」

―――――――――


 「アーツ攻撃無効」という謎のスキルがあった。

 スキルを創れることを驚きはしない。

 「創世」は世界すら生み出す能力だ。スキルを生み出すくらい何ともないのだろう。


―――――――――

アーツ攻撃無効:アーツ・バスラが放ったあらゆる攻撃を受けることはない。

―――――――――


 完全に僕を想定して創られたスキルだ。

 これを打ち破るすべはない。

 流石にこれにはびっくりした。

 まさか「創世神」がこんなピンポイントなスキルを創ってくるとは思わなかった。


 だが、恐らくここでいう「攻撃」とは、相手にダメージを与える技のことだろう。

 つまり、相手にダメージを与えないものなら攻撃認定されないはずだ。

 雑な暴論だが、スキルは割と適当なところがあるので何とかなる気がする。


 僕は自分で創り出すスキルの「創造」の対象を「創世神」にする。

 そして「創世神」に創り出したスキル。


―――――――――

スキル無効:自分が持つスキルの効果を全て無効化する。

―――――――――


 これで「創世神」がスキルを使えない。

 僕は再び「自動標準」をし、即死魔法を発動した。


 「創世神」はいとも簡単に命を落とした。


 ……。


 …………。


 ………………。


「…………オオオオオオオオオオオオオ!!!」


 静寂が場を支配したがそれも一瞬、スピーカーでも使ったのではないかと思うほどの大音量の歓声がそこら中に反響して響く。


 こうして僕は、神スキル「創造」で最強になった。


 ▼


 数ヶ月後。


 「神界」の長になった僕は、忙しいながらも戦争に参加した理由である「平和な生活」を無事に手に入れ、キー、レヴィ、フェラリー、アレシスの四人と一緒に住んでいた。


 今まで生きてきた中で最高と言えるほど楽しい平和な時間を僕達は過ごす。


 一方、長としての仕事もしっかりやっている。


 今から丁度「魔界」と和平条約について話し合いにいくところだ。

 最後に「終世の魔王」が残した言葉。

 脳裏に焼き付いたそのお願いの通り、それもしっかりとやっている。


 僕は苦労して手に入れた平和な生活を、この神スキル「創造」で永遠に守っていく。

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実は僕、神でした ~神スキル「創造」で最強です~ 輪島廻 @wajimameguru

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