第33話 即死のスキルと未知のスキル
僕は再び「捜索」を発動する。
ここに来る前に使ったときには「夢の魔王」と「存在の魔王」はかなり近い距離にいた。ということはこの近くにいるだろう。
「存在」という、「存在の魔王」が持つスキルなら転移くらい容易そうだが、してないと信じる。
そして、隣の部屋に続くドアを開けて絶句する。
――そこには「存在の魔王」と、そして「破壊神」がいた。
「なん……で……? 何でお前がここにいる……?」
「破壊神」は本来「神界」側に付くはずだ。
それがどうして「魔界」側にいるはずの「存在の魔王」と一緒にいるのだろうか。
その疑問は、「破壊神」本人が答えを教えてくれる。
「……俺は、俺は『神界』の為に動いてきた……。『神界』を守る為にお前を殺そうとしたんだよ! それなのに! それなのに、『神界』の連中は俺の頑張りを認めてくれなかった! 俺が独断で動いたことを責めた! もうあんな連中と群れるのは嫌だ、むしろあんな奴ら全員死ねばいいんだ! お前も含めてなぁ!!!」
言っていることはわかる。
自分の頑張りが認められないことは悲しいことだ。それが認められないだけでなく、罪として裁かれたのなら尚更だ。
だけど、「破壊神」の言い分はただの子供だ。
僕を殺すという行為自体が「神界」の為になるというのは頷ける。証拠に実際に一回僕は「神界」を崩壊させかけているし、僕は「神界」に未知すぎる。
「神」の中でも最も優れた力を持ちながらも、「神界」への愛着はない。そのため、「神」でありながら「神界」を脅かす可能性がある。
しかし、僕を殺すことがどんなに意味を持つ行為だろうがそれは独断だ。
独断行動というのは、時に「神界」全体を破壊に導きかねない。
「破壊神」は行動に移る前に誰かに相談しておくべきだった。
そして、それで一度裁かれたからと言って「魔界」側につく。
これじゃあ単なる子供だ。
そのことを全て「破壊神」に伝える。
最後に皮肉っぽく「こんな簡単に裏切れるのに何が『神界の為に動いてきた』だ」と言っておく。
別に僕は「破壊神」の頑張りを否定するつもりはない。
しかし、こいつと戦うことになるのなら、少しでも挑発しておいた方がいい。
「っ……なんだと!? 俺の頑張りも知らないくせに生意気な口聞いてんじゃねえよ! 大体こうなったのはお前のせいなんだ! 絶対に許さねえ!」
僕の思い通り、かなり怒ってくれたようだ。
「破壊神」の能力は本当に強い。
冷静に搦め手などを使われると厄介この上ない。
しかし、激高してくれれば恐らく攻撃が単調になるだろう。
そうすれば攻撃を捌きやすい。
しかし邪魔が入った。
「……まあまあ、あまり怒るなよ、破壊神。あんな露骨な挑発に引っかかってはダメだ。君の力が本気で振るえなくなるからね」
「存在の魔王」だ。
彼の言葉によって、「破壊神」がいくらか冷静になってしまう。
残念だ。別にそんなセコい手を使うまでもなく勝てるのだが……。
「……おい、ここで決着を付けようぜ」
「破壊神」がそう持ちかけてくる。
こちらとしても依存はない。
「おい『存在の魔王』、お前も同時にやるのか?」
「勿論。君は強い。そこの『破壊神』や僕が、それぞれひとりで戦って勝てると思っているほど君のことを嘗めてないよ」
「そうか……」
僕としては一人ずつが良かった。
けど、向こうにはそんなことをする理由がない。
―――――――――
名 前:アーツ・バスラ
性 別:男
年 齢:14
種 族:神
職 業:創造神
スキル:「鑑定」「捜索」「魔法適性(即死)」「不死」「外部干渉不可」「魔法適性(全)」「武術適性(全)」「身体能力強化」「目覚まし」
契約精霊:「創造」
―――――――――
これが僕のステータスだ。
スキルは強い。確かに強い。
だが、「破壊」も「存在」もスキルを無効化できる。
それがどこまで有効なのか、それがわからない以上油断はできない。
今回の鍵は、「魔法適性(不死)」と「外部干渉不可」が有効かどうかだと思う。
「破壊」の力で致命傷を負わせるのには直接触れるのが一番早い。むしろ脳味噌筋肉な「破壊神」には他の方法は使えないかもしれない。
そして僕の即死魔法のトリガーも「触れる」ことだ。
となると、勝てる可能性は高い。「破壊」は触れてから「破壊」を使用するのに対し、即死魔法は触れてすぐに発動するからだ。
そして、「外部干渉不可」が使えるのならその勝ちは確実な物になる。
「存在」はよくわからない。
そもそも何ができるのかがわからないのだ。
しかし、「外部干渉不可」と即死魔法が有効ならばどんな効果を持っていようと勝ちは揺るがない。
その点で、この二つのスキルが重要になってくる。
だがしかし、「破壊」、あるいは「存在」でこのスキルを消すことができてしまうのなら一気に勝率が下がる。
触れただけでゲームオーバーな「破壊」をかいくぐり、どんな効果を持つのかよくわからない「存在」の効果を受けずに二人を無効化しなければならなくなる。
とにかく、全力で戦ってみよう。
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