第29話 「創造」の精霊
僕は沈んだ気分で「神界」から帰ってきた。
まさか「創世神」が既にスキルを使えないとは思わなかった。
「ただいま~」
ドアを開けると満面の笑みを浮かべているキーとレヴィがいた。
「そんな顔してどうしたんだ?」
「「えへへ~」」
尋ねても答えずににやけるだけだ。
「気味悪いぞ……本当にどうしたんだ?」
「聞きたい? アーくんっ」
今までキーがこんなに勿体ぶることはなかった。
本当にどうしたってんだ。
「ああ、聞きたいから教えてくれ」
「じゃあ言うぞ、言っちゃうぞ」
レヴィもレヴィでテンションがおかしい。
言っちゃうぞ、言っちゃうぞと何度か繰り返した後、ようやく僕の知りたいことを言う。
「「スキルを戻す方法を見つけました~!!!」」
ん? 僕の聞き間違いかな?
「あの、今何て……」
「「スキルを戻す方法を見つけました~!!!」」
どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。
「どうやるんだ?」
この二人を信用してない訳ではないが、方法を知るまでは信じられない。
「へへーん、聞きたい?」
「あぁ……」
この異常なまでのテンションの高さを見るに本当なんだろうな……。
「まず前提として精霊っていうのは万物に宿るんだよ」
「ああ、それは知ってるが……」
そのことは知っている。
精霊というのは全てのものに宿ると言われている。
木にも火にも水にも、勿論人などの動物にも……。
「それがどうしたんだ?」
「わからない? つまり、スキルにも宿るんだよ~」
なるほど、その発想はなかった。
「でも、それがどうしたんだ?」
「私のスキルはなーんだ!」
「『精霊術適性』だが……」
「そうっ! つまり、スキルに宿る精霊とも契約できるんだよ!」
わかったようなわからないような……。
正直あまりピンとこない。
「精霊との契約でできるようになることは精霊の持つ力を借りること。そして『創造』の精霊の持つ力って言うのは『創造』のスキルと同じ」
あっ……、つまり……。
「つまり、『創造』の精霊と契約ができれば『創造』が使えるようになるってことか!」
ようやく理解した。
でも問題点がある……。
「もう『創造』はない……。どっちみち無理なんじゃないか?」
もう既に存在しない精霊と契約するなんて無理だろう。
そこで、待ってましたとばかりにレヴィが口を開く。
「そのためのわらわじゃ!」
レヴィ? あっ、レヴィのスキルは……。
「わらわのスキル『魔法適性(時空)』を使えば問題ないのじゃ!」
つまり、レヴィのスキル「魔法適正(時空)」で僕が「創造」を持っていた頃に時間を繋ぐ。そしてキーの「精霊術適性」で僕と精霊の間にパスを繋いでもらい、契約する。
これが成功すれば僕は再び「創造」が使えるようになる。
しかも恐らくだが、スキルとしての「創造」を戻すのではなく、「創造」の精霊と契約するだけなので想像力を対価に差し出す必要もない。
因みに、「創造」を「破壊」された時点で僕の想像力は元に戻っている。
「なんだそれ、前よりも良いくらいじゃないか……」
「創造」が返ってくると思うと、自然に涙が溢れ出てきた。
「ありがとう……。キー、レヴィ……」
僕のお礼に、二人は顔を綻ばせた。
▼
「さあ、問題はここからじゃ!」
完全にもう「創造」が戻ってきたつもりでいた僕の思考は現実に引き戻される。
「これを成功させる為に、キーは他人と精霊の回路を繋げるように練習してきたし、わらわは契約成功の確率を上げるために時空魔法の燃費を上げてきた」
その言葉を聞き、思い出されるのは「神界」に行く前、やたらと疲れていたキーとレヴィ。
「まさか僕の為にあんなに疲れるまで訓練していたのか?」
「そうだよ!」「そうじゃ!」
この二人には感謝が尽きない。
「二人とも……、ありがとう」
「そ、その話は後回しじゃ! とにかく! わらわはできる限り長時間時空魔法を使っているしキーも確実に回路を繋げるから後はアーツ次第じゃ!」
そうだ、ここまでやってもらって失敗するわけには行かない。
絶対に「創造」の精霊との契約を成功させてやる。
▼
「ハアアアアアアアアッ!!!」
レヴィが時間を操って現在と過去を繋げる。
「早くっ! 早くするのじゃ!」
「うんっ! グウウウウウウッ!!!」
そしてキーが過去の僕が持つスキル、「創造」の精霊と現在の僕の間に回路を繋げる。
現在と過去の僕、その両方の体が眩く光り出す。
そして、僕の頭の中に響く声。
キーが精霊と契約したときもこんな感じだったのだろうか、などと考えながらその声に耳を傾ける。
「汝、|何故(なにゆえ)我との契約を望む」
何故、何故か……。
そんなの答えは一つしかない。
「僕は『創造』のお陰で皆と知り合えた! 皆を守ることができた! だから僕はまた『創造』を使えるようになりたい!」
本音、心からの声を大声で叫ぶ。
「浅ましいな。だが、その覚悟は本物のようだ。我の力、存分に振るうが良い」
……え? こんな簡単に契約できちゃうの?
「どうした? 不満か?」
「え、いや、そういうわけじゃないけど」
「なら良いだろう? 本当に必要なときだけ我を呼び出せ。いいな?」
「ああ、わかった。ありがとう」
そして僕は現実に引き戻された。
▼
「……くんっ! アーくんっ!」
「んんっ……」
若干の頭痛を感じながら目を開ける。
「どうじゃ? 契約はできたのか?」
相当に消耗したレヴィがそう問いかけてくる。
「ああ、ありがとう……」
そう言うと、感極まったのかキーとレヴィが抱きついてくる。
「良かった、良かったよアーくんっ!」
「良かったのじゃ、アーツ」
二人とも僕と同じくらい喜んでるのではないか。
「何で二人がそんなに喜んでんだよっ」
「むー、悪い? アーくん」「悪いか?」
「いや、そんなことはないが……」
それにしても二人ともキャラが崩壊してないか?
(「創造」、早速で悪い。「鑑定」スキルを創ってくれないか?)
(全く、本当に必要なときだけと言っただろうに……)
そして、スキルを得た感覚。
自分を「鑑定」してみる。
―――――――――
名 前:アーツ・バスラ
性 別:男
年 齢:14
種 族:神
職 業:創造神
スキル:「鑑定」
契約精霊:「創造」
―――――――――
新たに増えていた「契約精霊」の欄を見てやたらと嬉しく感じた。
「そういやキーの精霊って自意識はあるのか?」
そんな素振りをキーは見せたことがないが、キーが契約した精霊はかなり高位らしいしその可能性もあるかもしれないと思って聞いてみる。
「ん? ううん、ないよ? もしかしてアーくんの精霊にはあるの?」
「ああ、お前ももっと高位な精霊と契約してみたらどうだ?」
キーならもう少し高位な精霊とも契約できるはずだ。
「あの木に宿っていたのより高位な精霊なんてそうそうないと思うがの」
まあ、レヴィがそう言うのならそうなのだろう。
「うん、もし見つけたらそうするよ」
キーよりも高位な精霊と契約してるのを何となく後ろめたく思ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます