第百三話

 暗闇の内側、その体内とも呼べるその場所で異変が起こり始める。


 ピシピシピシピシ──────バリーン!

『グワアアアアァァァァァァ!!』


 暗闇により覆われていた禍々しい核に突如として亀裂が入っていくと、それを引き裂くようにして中から光の玉が飛び出してくる。

 そして、光の玉を中心に光がどんどんと集まり始めると、やがて人型を形成していく。

「・・・・・・急に結界が破られたのには流石に焦ったが、こういうことだったのか。アイツめ、余計な気を使いやがって。さっさと次元の狭間にでも幽閉しておけと言っておいたのに。それで世界が滅ぼされたらなんの意味もないだろうに・・・だが、感謝するよ。仮初めとはいえ、俺が求め続けていた夢を叶えてくれたのか。」

 男の姿をとった彼は瞳を閉じたまま、自身が置かれている状況の把握をしていく。


 そんな彼を余所に光により引き裂かれた暗闇を宿した核は、しかし直ぐに修復されると再び闇を纏い始める。

 だが、男はそんな事を気にすることもなく暗闇に背を向けたまま、まるでこれまでの出来事が情報の濁流のように流れ込んでくるのを分析整理していく。


『バ、バカな・・・何故貴様が生きている? 貴様は消滅させたはずだぞ・・・。』

 暗闇もまた人型を取り始めると、目の前に居るはずの無い存在に驚愕するように問い掛けていた。


「パパか・・・、俺がそう呼ばれる日がまさか来ようとはな。しかし──────、己の失態を娘に尻拭いさせるなど父親失格だろうが!」

 自身の不甲斐なさに憤慨している男は、拳を強く握りしめる。


『答えろ! 何故貴様がここに居る!!』

 暗闇は苛立たしそうに、いや、むしろ焦っているように彼に詰問していた。

「なんだ、随分と感情が豊かになってきたじゃないか。初めて会ったときの無機質だった頃とは比べ物にならないぞ。これも、永い時間共に過ごした成果ということか。」

 漸く、暗闇の存在へと注意を向ける男。


『ふざけるな! 何が共に過ごしただ。貴様よくもそんな口を・・・・・・。』

 暗闇の体が震えていた。まるで怒りを抑えているように。

「何故俺がここに居るのかは、お前も本当は分かっているんじゃないか? 俺がお前と同一化しているように、お前もまた俺との同一化を果たしているんじゃないのか。その証拠に、お前には本来無いはずの感情というものが芽生えてきている。」

『何をバカな。』

 暗闇が男を睨み付ける。そんなわけはない、そんな事はあってはならないのだと。


「確かに、結界の崩壊時にお前に飲み込まれた俺は消滅する筈だった。結界の力がなければいくら俺でも、お前を押さえ込むことなど不可能だからな。だが、不幸中の幸いといっていいのか、お前と同一化した俺は、お前の一部として認識されお前の破滅の力から逃れることが出来た。おまけに、お前の不滅という随分と手を焼かされたその力の特質を受け継いでな。」

 それは決して意図したことではなかったが、それ故に男は消滅を免れることとなった。


『同一化し我の力を・・・だがならばこれで貴様にも理解ができたはずだ。このままこの世界が続くことは決して許されることではない。それは世界の法則に反することだ。無理に存続させ続ければどんな影響が現れるか・・・。最悪、この世の法則が崩壊し二度と新たな世界が誕生出来なくなる事態すらあり得るのだぞ。終焉と再生は世界を永劫維持する為に果たされる宿命。個人の感情でどうこうして良いものではない!』

「・・・そうかもしれないな。お前が正しくて、俺の行為こそが本当は世界にとっては悪なのかもしれない。」

 男もまた、暗闇の行為を理解させられていた。ヤツをただ悪だと断罪することは最早男には出来なくなっていた。


『だったら──────』

「だがな、それでも俺はお前を認めることは出来ない。あの時もそうだったように、俺には守らなくてはならない存在が居る。そして、何よりも今の俺はあの娘の父親になった。愚かと言われようとも娘の笑顔を守ることが、父親が背負うたった一つの法則正義。」

 互いに決して相容れない主張。同一化してなお、彼らの道は交わることはなかった。


 目に入れても痛くない可愛い娘が居て、世界の法則のためにその命を差し出せと言われて、はいそうですかと受け入れられるわけがなかった。

 例えその行為が悪だと言われようとも、一歩たりとも退くことは許されない。その結果、煉獄に堕ちようとも、自身を代償に払うことになろうともだ。


『もうよい、やはり時間の無駄だったようだ。だがどうするのだ? 互いに不滅の存在となった今、決着をつけることも出来なくなったが永遠に戦い続けるつもりか? 仮にお前が魂の主導権を握ったところで、この我を抑え込んでおくことなど不可能だぞ。結界を失った今、我を阻むものなどなにも有りはしないのだから。まだ存在を固定するまで今しばらくの時間を要するが、力を完全に取り戻すまで精々この身体を利用させてもらう。』

 暗闇は冷静さを取り戻し、男に向かってそう勝ち誇った様子であった。


「くっくっくっくっ──────。」

『何が可笑しい!』

 男は笑いをこらえながら、暗闇を見つめる。


「成る程、知識を得ることと理解するということは別ということか。言ったろう? 俺たちは同一化したと。つまりそれは、お前にも俺の特質が移ったということだ。確かにお前は不滅だが、同時に死に束縛される存在へと変わった。」

『何を意味の分からぬことを。不滅の我を殺すだと? そんな事出来る筈がない。』

 暗闇は無意識に警戒するよう、僅かに男から離れる動作をとった。


「漸くけりを付けることが出来る。この時を待っていた。遥か悠久の時から、ただひとりの友を傷付けてまで待っていたぞ。教えてやろう、お前に本物の絶望というものを。」

 男の体から次元を越えた力の波動が溢れだす。


『無駄なことを』

 暗闇もまた、男と同等、いやそれ以上の力を感じさせる波動を出し、互いの力が干渉し合うとそこは最早何人にも一切の介入を許されない空間へと変わっていく。

 ついに因縁の決着、雌雄を決するときがやって来た。

 この戦いを制したものが魂の主導権を握ることになる。


 一触即発のふたり。実力の拮抗したものの戦いというものは、決着がいつまでも着かずに延々と続く場合と、一瞬で全てが決まる二通りがある。

 だが、どちらにしてもわずかな油断が命取りとなる。それ故に、両者はおいそれとは動くことが出来なかった。


 それは剣豪たちが互いに視線のみで牽制しあい、一瞬でも隙を見せた途端に勝敗が決まるそんな空気を生み出していた。

 戦いが動いた切っ掛けはほんの微かな変化。空気の流れ、わずかな音そんな些細なものだったのだろう。

 先手をとったのは男の方であった。


 男はバックステップをしながら懐に手を入れる。それはまるで拳銃を使った一騎討ちの如き動作で、徐にあるものを取り出していた。

 それは銀色に輝く長細い機械のようなものであった。

 暗闇は男の動作に警戒するも、その行動の意味が理解できなかった。そもそも武器など使わずとも、自身の力だけで本来は星すら破壊できるだけの力を持っているのだ。

 わざわざそんなものに頼る理由など何処にも無かったのだから。


(動きを封じる魔道具か何かか? 無駄なことを、そんなものが今更我に効くものか。だが、また封印されては敵わんからな。)

 念のため防御行動をとるτέλος。


 カチャッ!

 そんなτέλοςの行動と同時に男が機械のボタンを押した。

「τέλοςお兄ちゃんのバカ! 大キライ!」

『ふぐぅわ!』

 突如、機械より発せられた幼女(推定八歳くらい)の声は、τέλοςの防御壁をすり抜けて急所(心)を貫く。


 τέλοςは予想外の口撃にたまらずに膝をつくと、生まれたての小鹿のようにガクガクと足が震えて立ち上がることが出来なかった。

(バッ、バカな・・・、今のはアーセル国のテミッハの街に住んでいるパン屋の看板娘リムちゃん八歳。一人娘として両親から大切に育てられたが、ある日母親が病に倒れてしまい、実家のパン屋のお手伝いをしながら健気にも母親の看病もするという母親思いの優しい女の子。食べ物屋故に、動物を飼うことが出来なかったが、近所に捨てられた子猫を見付けてはご飯をあげ、その子の新しい飼い主を探してあげたりもしていた。悩みは幼馴染みの一人の男の子が、最近自分とあまり遊んでくれなくなったこと。だが、それはリムちゃんを女の子と意識してしまった彼が、彼女との関わり方に対して戸惑っていたことが原因であり──────)

『って、なんだこの情報わーーー!』

 ゴン、ゴン、ゴン!

 τέλοςは頭を地面に打ち付けながら叫び声をあげる。


「ふっ、何を驚くことがある? この俺の領域にまで辿り着けばその程度のことは造作もないこと。この世界のあらゆる星々にいる幼女、童女、少女たちの全データ総数41,586,542,568,412,257,865人分。例えどれ程膨大な量になろうとも一言その声を聞けば、何処の誰か等のプロフィール情報を瞬時に引き出すことが出来る。道を極めるとはそういうことだ!」

 なんかスゲー格好いいことを言っている体で決めポーズジョ○ョ的なヤツを取りながら、τέλοςにのたまう男。


『なんで彼女の声が・・・。』

「愚問だな。日々、彼女のことを見守り続けた俺は、ただ成長日記を付けるだけでなく、様々な動画データ、音声データも保存済してある。それらを使えばこのように「お兄ちゃん今日は一緒に寝てもいい?」という素晴らしい声を聞くことも出来るのだ。」

 ・・・・・・星々を股に掛けたワールドワイドの真性ロリコン変態クソストーカー野郎だった。


「理解したか? これが本物の絶望というやつだ。」

 何処かの慢心した王のようなセリフを吐く変態ストーカー。


『ふざけるな、こんなことで───』

「未だ抗うというのか・・・いいだろう、ならば貴様には秘蔵コレクションTOP10に名を連ね、最強の双璧と呼ばれている彼女たちが相応しい。」

 変態ストーカーは懐から新たに二台のボイスレコーダーを取り出す。


『あっ、あっ、あっ、』

 その言葉を聞いたτέλοςは絶望の表情に染まる。

 最強の双璧の言葉から導き出される情報に、思い浮かぶのは恐らくあの二人。

 その二人の戦闘力は、某起動するこいつ、動くぞ戦士の連邦の白い○魔と普通より三倍凄い赤い○星の如く、あるいは遊びの王様の世界の黒い魔術師と青眼を持った白い龍に匹敵する存在であった。


「お前にももうわかっているのだろう? 全41,586,542,568,412,257,865人の中でも一万番台を付けられた者は選び抜かれたエリート、さらに百番台は最早神の領域にすら届き得る。そして、TOP10ともなると単純に順位など付けられるものではない。その一人一人が世界を統べることの出来る存在なのだ。それでも敢えて順位を付けるとするならば、この二人は外すことは出来ないと俺に確信させたほどの者だ。この一撃を喰らえば、貴様といえど只ではすむまい。下手をすれば精神が死に絶えるだろう。お前には最早勝ち目など無い。手を引くのなら今のうちだ。図らずも貴様はこの俺の領域にまで到達できたのだ。今ならばこの世界の半分を貴様に任せてもよいのだぞ。共にこの世界幼女、童女、少女を見守っていこうではないか。」

 どこぞの魔王か貴様は!


 ボイスレコーダーを両手に持ち、男はτέλοςに最後通牒を行う。

『我は退けぬ・・・退けぬのだー!』

 τέλοςは震える膝を強引に黙らせると、男へと飛び掛かる。だが、そんな捨て身も虚しく男は即座にスイッチを押した。


 カチャッ!

「τέλος兄上様、貴方には失望しました。もう二度と顔も見たくないです!」

『ぐべぇらぁ!』


 カチャッ!

「見損ないましたτέλοςお兄様、悔い改めて下さい。神よ、どうかこの迷える子羊を救いたまえ。」

『ぶぉごあぁぁ!』


(や、やはり今のは和の國で巫女を務めるサクラちゃん十一歳。社家の家に生まれ、その類い稀なる霊能力とお祓いの力を使って困っている人々を救い、しかし決して見返りは求めない清廉潔白な心の持ち主。彼女の巫女舞は見るもの全てを魅了し、遠方の国の人々も彼女の舞を一目見るためにわざわざ足を運ぶと言われている。彼女は相棒とも呼べるコタロウという白い犬を飼っている。彼はサクラちゃんが五歳のころ、捨てられていたところを拾い育てられ寝食を共にし、今では彼女を守るナイトのような存在になった。最近年の離れた妹が出来たのだが、実におしい。せめて後五年早く生まれていれば、少女と幼女の姉妹揃ったロリ舞・・・もとい巫女舞は壮観だったことは想像に難くない。彼女の悩みはなんでも相談できる友だちが居ないことか。有名人で街でも人気者の彼女と対等に接してくれるひとが、同年代はおろか年上の人たちですら畏れ多く距離を置かれてしまい──────)


(そして、もう一人はハーリオン聖王国のシスター、マリアちゃん十歳。産まれたときに教会に捨てられたところを拾われ、その教会の神父を父と仰ぎ幼くしてシスターとなった。彼女は孤児院にも足繁く通い、料理の手伝いや小さな子達の相手をしたり、貧しい人達に炊き出しの手伝いをしたりと街のみんなから慕われている。彼女の美貌は幼いながらも人々を惹き付け、将来は絶世の美女になることが分かるほどであり、そのことで貴族から養子の話も頻繁に来ているが、神父を本当の父と仰いでいることまた、神に仕える敬虔な信徒としてその話は断り続けている。最近の悩みは、同年代の少女たちと比べると控えめとも呼べる胸の成長具合だろうか。だが、それは本人の気にしすぎで、年齢から考えればまだまだ将来性はあるし、それに大きければ良いというものでは決してなく──────)


 バターン!

 その場に力なく倒れ伏すτέλος。

「だから言ったのだ。お前に勝ち目は無いのだと。例え俺の領域に到達したとしても、知識だけの貴様と全てを経験覗き+情報収集してきた俺とでは積み重ねた重みが違う。もう諦めるんだ。」

『───止まれぬ・・・我はもう・・・』

 男は眼を閉じるとτέλοςに告げる。


「お前の気持ちは分かる。これまで幾度となく滅ぼしてきた世界にも彼女幼女、童女、少女たちは生きていた。それを世界のためと手を下したお前の行為は、感情を持ってしまった今のお前を、罪悪感と贖罪の気持ちが責め続けているのだろう。彼女幼女、童女、少女たちの犠牲を無駄に出来ぬと。」

 τέλοςは眼を見開くと、男の顔を見上げていた。


『そうだ・・・。我は終焉をもたらす存在τέλος、この世の法則を守りし番人。世界を存続させるためならば、いかなる犠牲も厭わない。』

「その結果、彼女幼女、童女、少女たちを犠牲にしてもか?」

 返事は返っては来なかったが、男にはτέλοςの覚悟が伝わっていた。


 ・・・・・・オメーらなんか感動的な話のように進めてるけど、結局のところ幼女、童女、少女の存在しか考えてないよな?


「分かった。もう終わらせよう。この一撃はお前を確実に死に至らしめる。いくらお前でも、いや、お前だからこそ耐えきることは出来ない。」

 男はボイスレコーダーをくるくると回しながら、大切に懐にしまうと水晶玉の形をした道具を取り出す。


「これは記憶を読み取り、その想像したものを現実に呼び出すことのできるアーティファクト神々の奇跡だ。」

 τέλοςに見せ付けるように水晶玉を手に取る男。

『ぐおおおぉぉぉぉぉぉ!』

 τέλοςは瀕死の状態の身体にムチを打ち尚も立ち上がろうとしていた。

 それはまるで、倒れたまま死ぬことは許されないという漢の意地と覚悟を感じさせる。彼女幼女、童女、少女たちへの償いの為にもと。


 ピカーーーー!!

 水晶玉が光輝くと、やがて両者の前に白髪を靡かせた可憐でキュートで神々しいオーラを纏わせた、全宇宙最強にして至高の秘宝である超絶可愛い少女が降臨なされた。

「おおおお──────」

『──────神よ』

 二人とも記憶の中でしか見たことがなかった至高の存在が、今目の前に降臨されたことにより戦っていることすら忘れて感涙にむせび泣き魅了されていた。


 水晶より降臨されたミウは、後ろ手に手を組ながらτέλοςの元へと近付いていく。

 そして、俯いた状態からτέλοςを見上げると目尻に涙を溜めながらいい放つ。

「τέλοςパパのバカ! もう一緒にお風呂に入ってあげない!!」


 ピキピキピキ──────。

 瞬間、この世の全てが凍り付いた。

 τέλοςの身体は真っ白に燃え尽き、さながらリングサイドで白い世界に包まれて終わった某ボクサーのような状態であった。

「ジーザス・・・」

 そして、自分でやっておいてそれを端から見ていた男ですらもその衝撃の余波は凄まじく、ガクガクと震えながら神に祈りを捧げていた。


 絶望、それは死に至る病。

 終焉をもたらす不滅のτέλοςといえどもロリギヌスの槍一緒にお風呂入らないの一撃をもろに喰らってしまっては、その絶望に耐えられるはずもなかった。

 だが、勝者となった男の表情が晴れることはなかった。その胸の内に去来するものは、自分と同じ高みへと辿り着くことができたかもしれなかった存在。


 男はいつも孤独だった。遥か頂きへと辿り着いた男は麓を見下ろしても、誰一人として男に付いて来られるものは居なかった。たった一人の友も、男のよき理解者ではあったがやはり高みに辿り着くことはなかったのだ。

 求めて止まなかった存在に漸く出会えたのに、それでも自身の手で葬らなければならなかった運命を彼は嘆く。


 いや、お前の居るとこど底辺だから。マントル突き破って内核まで到達してるから。下を見下ろしても誰もいないよ? だって全員お前より遥か上空に居るもん・・・・・・。


「バカ野郎───耐えられる筈が無いことくらいお前だって分かっていただろうが。俺に止めて欲しかったのか? 自身の罪を自覚してもなお止まれぬ己が宿命に、お前を唯一理解できるこの俺の手で・・・。」

 男は真っ白に燃え尽きたτέλοςの亡骸を見つめながら、寂しそうにそう呟いた。


「もしもこんな形ではなく別の出会い方であったならば、俺たちはどれ程の友になれたのだろうな・・・・・・」

うん! ワールドワイドの真性ロリコン変態クソストーカー野郎がもう一人増殖しなくて本当に良かったよ。


「τέλος、俺の中で眠るがいい。そして、俺と共に世界幼女、童女、少女を見守っていこう。それがお前にできる本当の贖罪だ。いつの日か、この世界にお前のいう災厄が起きたときには俺に力を貸してくれ。この世の真理小○生は最高だぜ!に到達した二人ならばどんな不可能も乗り越えていけるはずだ。」

キィーーーーーーン!


 男の核にτέλοςのそれが融合していく。

《滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅──────》

 瞬間、破滅の衝動が男の精神を蝕んでいく。


「くっ、これ程のものなのか。この衝動、今の俺では些か手に余るようだな。せっかく世界の滅亡を止められたというのに、俺がヤツになり変わっては本末転倒だ。」

(仕方ない。今しばらくは俺も眠りにつくとしよう。この力を制御しなくてはならないしな。娘と会えるのはもう少し先になるか。ちっ、この世界で悪巧みしている姑息な奴らを炙り出してやろうと思ったんだがな。)


「後は頼んだぞ。どんなことがあろうとも娘を守り抜くんだ。凌馬・・・もう一人の俺。」

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