第2話

「うわあああああ!」

 凌馬は気が付くと、そう叫び声を上げてしまった。

 辺りを見渡した凌馬は、自分が森のなかで寝ていることに気が付いた。


「あれ、ここは森?」

 凌馬は疑問に思った。自分は転生したはずなのに、なんで体が大きいのか───というか今までの見慣れた自分の体なんじゃないかと気付き、確認しようとポケットに入れていた手鏡に写る自分の顔を見る。


「てっ、まんま俺じゃん。異世界ではイケメンにして貰って女の子とにゃんにゃんしたかったのに、俺の人生設計がパーじゃないか!」

 凌馬は愕然としてそう叫んだ。


「はぁはぁはぁ。とりあえず状態を確認しないとな。ステータス。」


○名前

如月凌馬きさらぎりょうま


○ジョブ

無限の可能性ニート─状態─

 その者、未だ何者にもあらず。故にその者は、無限の可能性を秘めた存在なり。立て若者よ、涙を拭きそして前を見ろ! きっと明るい未来が待っている・・・・・・。


○能力値

 力     300

 魔力   9999

 素早さ   250

 生命力   200

 魔法抵抗 2000


○エクストラスキル

無職からの脱出シーカー・アフター・ザ・トゥルースLV.1

 一日に一度だけ好きな職業に就くことが出来る。選んだ職業により、能力値、スキルが変わる。

 日付が変わると無職に戻ってしまう。


「・・・・・・いや、うるせえよ! ふざけんなよ、なんだよ無限の可能性って。カッコよく言ってもニート言っちゃってるじゃん! 大体俺はニートじゃなかったじゃん。ちゃんと働いてたよ? そりゃしばらくは引き込もってまったりしようとしてたけど、すぐ死んじゃったんだからノーカンだろ!」

 自分のステータスにツッコミを入れる凌馬。


「はぁはぁはぁ、もういいや。能力値は・・・魔力特化型だな。しかし、エクストラスキルか。これは使いようによっては役に立ちそうだ。なんにでもなれるのは強みだからな。一日しか持たないけど・・・。これは、恐らくあのカタログを持ったまま来てしまった影響かな?」


 凌馬は気を取り直して、取り敢えず使えそうな職業をピックアップして、いざという時のために備える。

 取り敢えずは、街を目指そうと考えた凌馬は森から出るために歩き出した。

「ふむ、結構歩いているのにあまり疲れないな。これもこちらに来た影響なのか?」


 二時間ほど歩き、ようやく森を脱出した凌馬は道が左右に延びているのを見てどちらにいくか考える。

「さて、どっちに行くべきか。まあ考えても仕方ないか。」

 凌馬は森から拾ってきた木の枝を道上に立てると、支えていた手を外して枝の倒れる方向を見る。


「右か。よし、左にいこう。」

 この男、かなりのあまのじゃくであった。

 凌馬が左の道を行き、太陽が真上にくる頃になって人が居そうな集落へとたどり着いた。


「おお、ラッキー。これでようやく一息つけるぞ。」

 凌馬は意気揚々と集落の入口を潜っていった。

「すみませーん! どなたか居ませんかー?」

 シーーーーン。

 返事がない・・・、ただの廃村のようだ。


「いやいや、せっかく来たのになにこの仕打ち。誰かいないのー?」

 凌馬は、取り敢えず家の中を一件ずつ見て回ろうと目の前の家に入る。


「お、お願いします、旅人さん。どうか食べ物がありましたら、この子にだけでも分けてくださいませんか?」

 家の中には、まだ十二、三歳位の女の子と十歳位の男の子が床に力なく倒れ伏していた。


「一体どうしたんだ。大丈夫か?」

 凌馬は駆けつけると、二人の様子を観察する。体はガリガリに痩せ細り、明らかに栄養失調なのが素人目にもはっきりとわかる。

(どうする? 食べ物なんて持ってないぞ。いや、もしかしたら・・・。)


 凌馬はエクストラスキルの無職からの脱出シーカー・アフター・ザ・トゥルースを発動する。

 すると、あの時神様から渡されたカタログが手の中に現れる。

  凌馬は急いでページを捲っていき、あるページで手を止めた。


「少し待っていろ。すぐに食べ物を用意してやる!」

 凌馬は家の外に出るとジョブを選択する。

 ・行商人毎度お馴染み移動販売

 移動販売車を召喚、操ることが出来る。品物は魔力により補充することが出来る。品物は限られ日用食品等がメイン。遠くの町まで真心込めて配達いたします。

○移動販売車 ○物品補充 ○安全運転


 ジョブチェンジした凌馬は、直感でどうすればよいかを悟る。

 魔力を込め始めると、召喚陣が現れて地球にある移動販売車が現れた。

 凌馬は直ぐに荷台の部分を開くと、ジュースと菓子パンを持って家の中に飛び込んだ。


「とにかくこれを食べるんだ。直ぐに元気になれるからな。」

 まずはジュースを二人に渡すと、ものすごい勢いで飲み始めた。

「ゴクゴクゴクゴク!」

「あんまり慌てて飲むなよ、むせるからな。」


「モグモグモグモグ!」

 続いて渡した菓子パンも、懸命に頬張る二人。凌馬は二人が食べ終わるのを見守っていた。

 二人が食べ終わり一息ついていると、女の子が凌馬に土下座してお礼を告げてきた。


「本当にありがとうございます。お陰で命を救われました。このお礼は何でもいたします。ですからどうか村の人たちもお救いいただけないでしょうか?」

 女の子の言葉に凌馬は問い返す。


「この村にはまだ人が居るのか? 外には人一人見なかったぞ。」

「はい、皆飢餓に苦しんでおりもう外に出る力もありません。今は家の中でただ死を待つばかりです。」

 凌馬は慌てて外へと出ると、移動販売車にある品物を次々と下ろしていく。


「これは一体?」

 女の子が外に出ると、見慣れない物体に驚きの声を上げた。

「驚くのは後だ。取り敢えず、ここにあるものを全ての家に配っていくぞ。二人も手伝ってくれ。」


 凌馬はそう言うと、二人も手に食べ物や飲み物を持ち家々に配り歩いていく。

「頼む! 間に合ってくれよ!」

 凌馬はそう叫ぶと、全速力で走り出していた。


・備考

《能力値》

    50~  200・・・一般人

   201~  500・・・駆け出し冒険者

   501~ 1000・・・中級者

  1001~ 2000・・・一人前

  2001~ 3000・・・上級者

  3001~ 5000・・・超一流

  5001~ 7000・・・伝説級の使い手

  7001~     ・・・勇者

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