プロローグ
「あ~あ、人生つまんねーな! ったく、部長のやつあんなことくらいで怒りやがって!」
彼の名は
昨夜、ゲームをなかなか止められず寝過ごしてしまい、今日先方と打ち合わせがあったのにすっぽかして大目玉をくらい、勢いで会社に退職を告げてきた帰りだった。
「給料安い上に、残業代も出さないブラックの癖に。今までのサービス残業の分で今日のことなんかチャラで良いだろうが!」
《いやっ、さすがに良くないだろう。気持ちは分かるけどな!》とどこか天の声が聞こえてきそうだったが、とりあえずまた就職先を探さないとと気持ちがダウンしていた凌馬であった。
ピロピロピロ───。
メールの着信に気が付いた凌馬は、スマホを取り出すとメールを開く。
《凌馬、あんた会社を辞めたんだって? 会社から連絡があったよ。いい年して無職なんてこれからどうするの。結婚だってまだだっていうのに。とにかく一度家に帰ってきなさい。》
「うわっ、マジかよ。部長のやつ家に連絡しやがったな! お袋も大体俺が結婚出来る分けないだろ。彼女すら居たことないのに。俺に期待すんなよ。」
凌馬はメールを見ながら愚痴を溢していた。
(こりゃあしばらく引き込もってゲームでもやるか。幸い金を使う暇もなかったから、蓄えは結構あるし。)
ニートまっしぐらであった。
コンビニで酒とつまみを買った凌馬は、家に帰って昨日の続きのゲームでもやるかと先ほどの悩みなど頭から吹き飛ばして歩いていた。
すると、凌馬の目に公園からボールを追いかけて、道路に飛び出さんばかりの勢いで駆けてくる女の子が目に入った。
「おいおいおいおい、冗談だろ!」
凌馬の目には、道路からトラックが走ってくる姿も見えこのままでは衝突するのが目に見えていた。
「たくっ、なんだってこんなことに・・・。」
ブッブー!
けたたましく鳴るクラクションに女の子の体は硬直してしまう。
凌馬は道路に飛び出し、女の子を突き飛ばして歩道の方に戻すと、自分へと突っ込んでくるトラックを見つめる。
(あーあ、俺の人生って一体・・・。)
そして、トラックが凌馬へとぶつかる───
「───わけいくかー!」
凌馬は、右足に全ての力を集約するとトラックを華麗に回避し歩道へと避難した。
《こいつ、フラグへし折りやがって(怒)。》
凌馬は、助けた女の子とそのお母さんに感謝されていた。
「本当にありがとうございました。あなたが居なかったらこの子がどうなっていたか・・・。」
涙を流さんばかりに頭を下げていた。
「いや、気にしないで下さい。たまたま気がついて、当たり前のことをしただけですから。」
凌馬は、頭を掻きながら女の子の母親にそう伝えた。
「ありがとうお兄ちゃん。」
「これからは周りに気を付けるんだよ。」
「うん!」
凌馬は女の子の頭を撫でると、「是非お礼を!」という誘いを断ると家に帰ろうと再び歩き出す。
キーーーン!
「なんだ一体?」
凌馬は上空から聞こえる音に、怪訝に思いながら空を見上げると高速飛行物体が凌馬目掛けて突っ込んできた。
「んなバカなーーー!」
ドーーーーーーン!
如月凌馬享年二十六歳。
死因、隕石衝突。
《こうして無事物語はスタートした。手を煩わせやがって────。》
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