百合、咲く
君を想像する
私の顔を直視できないと目を逸らしていまう君
あの放課後を何度も反芻しては
胸の高鳴りが収まらない
ああ、人に好かれたいと思うのは苦しいことだ
それでも好きになってほしいと欲望が私の思考を荒らすのだ
周りに眉目秀麗、高嶺の花と言われても
目の前にいる彼女は、告白してくれた誰よりも胸を躍らせて
醜いかもしれない、好かれようと卑怯な手を使いそうになる
手を握り、引き寄せ、頬に触れて、抱きしめる
彼女は驚いているだろう。身じろぎ拘束から逃れようとしているのだから
それでも離して距離を置いた君の頬は赤く
目を逸らし、次に私を見上げて「なぜ」と掠れた言葉を口にした
私はそれに一言しか返せない「好きだから」
ただ単純で複雑で心を搔き乱す、恋という射止めなければ始まらない終わらない呪いのような祝福に、君は戸惑うばかりで「大丈夫」君を傷つけはしないよ、と呟いた
君は赤い頬に、私が拘束して離した腕を柔らかく握ってくれる
これはチャンスか、それとも破滅か
少し待って彼女は顔を上げた。なんとも言えない。初めての体験
どうにか私の心中を受け止めようとしてくれている
拒絶してもいいのにしてくれない
なんと純粋で清らかなのだろう、恋を真正面から受けてめて悩んでくれる
今日はそれで終わり、二人きりの時間も終わり
「帰ろうか」私の一言で彼女は物言いたげそうな顔をしたけれど
彼女の心はグラグラとあっちこっちに右往左往していることだろう
「ゆっくりでいいから、少しずつ、いや私を知っていってくれないか」
そう告げると彼女は困った顔をした
「……はい」
小さく聞こえた許しの声
そうだ、まず私のことを話そう。どういう生い立ちで、どうしてこうなったか
赤裸々に未だに語ったことのない私を知ってもらう
きっと愛している、そんな欲張りはココから始まるのだろう
始めさせてくれ、きっと「好き」を君から奪うから
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