嘘つきの快楽

あと十分経つと始まる話の為に

彼は起きていた

一週間の内のルーチンワーク

約束された日時

胸躍らされる感覚

常に新しさを求め

嗅覚を全開にして探し続ける

さながら諦めの悪いハイエナな様な彼は

今日も今日とて待っている

なんでもかまわない、肉をくれ

それは肉になるか骨になるか栄養となるか

使い方は彼次第であり、運が悪ければ記憶の水底に沈んでしまう

「あれ、なんだっけ、あれ」と言うのは日常茶飯事

でも名前を聞けば記憶を掘り起こして嬉しそうに語るのだ

刹那の快感が彼を生かし、重層たる記憶の束が人生を語る

彼は今日も楽しそうであった

記憶の海でプランクトンに食べられた記憶でも

きっと彼は「ああ、あれ。面白かったよ」と口にする

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