代わる季節
雨が強い日である。それでも生暖かく、冷たく、どうにも気持ち悪い季節の変わり目の日だった。
思い馳せるのは仕事ばかり。今日も明日も同じでありながら同じでない。一ミリ程度だけれども変わる毎日。それは疲れを癒してくれる訳もなく背負っている何かを重くするだけだ。
口から何かを出したいと思ってカラオケに行く。
一か月に一回の一人カラオケ。ヒトカラ。
声を出す。古い民謡に、流行り歌、誰にも聞かれないから声を出す。
一か月ぶりのカラオケは喉が枯れていた。上手く声が出ずに殻を被ったよう。
結局、お気に入りの歌を歌い切り、マイクを置いた。
どうしようもない。声がでない。悲しいことに叫ぶことさえもできない身体になっていた。むなしいと心が泣く。
コンコン、と扉が叩かれた。
そういえばドリンクを頼んでいた。
入ってきたのはアルバイトであろう女の子、どこにでもいる、ちょっと化粧をした世を知ろうとする彼女は「お飲み物です、あとはドリンクバーとなりますのでご自由にどうぞ」と言って帰ってく。
常套句を言えばいい世界。私の世界もそうだけれども日々ちょっとだけ変化する。
季節の変わり目もそう。私の仕事は激しく上下運動をしながら謳い文句を何度も何度も飽きるほど言う。
ああ「ありがとう」と言い忘れた。
ちょっといいことをした気分になるというのに。
それさえもできないなんて。そうとう壊れているのだな、と思う。考えて仕事やめよう。そう思った。
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