予後の過ごし方
手入れをする暇もなく髭は伸び切り、白髪交じりの坊主頭が毛におおわれていく
なんとも悲しい話だろう。どんなに徳を積もうとも終わりはあっけなく
余命を聞いてから「まあいいか」と頷いた
それを医者に言えば「そうですか」との一言だった
親族は苦そうな顔していた
たった一人の孫だ
続けてほしいのだろう、しかし生きてこのかた一回も病気をしたことがない俺は
この痛みに耐えられないのだ
お前なら分かるかもしれない。だが俺は耐えられない苦しくてたまらない
治療して奇跡的に助かるか、治療して死期を早めるか、麻薬を使い残りの時間をかけて身の回りを固めるか
三つの選択肢全ては『死』につながっていた
はっきりと助からないと言われた。助かっても介助が必要で誰かの手を借りねば生きられぬ
なら、やはり後者を選んだ
それに孫は冷たい目をしていた
我慢をしていたと思う。我慢をしてこれからしなければならないことを頭の中で整理していたのだろう
最後には「そうですか」と一言呟いて終わった。
もう耐えられないのだ。体の痛みも、看護師に下の世話をされるのも、今後、奇跡的に生きながらえても介助が必要なこと
それに息子娘も手をださず、この孫だけが手を貸してくれるだろうということ
そして孫は昔から病を患っていることを鑑みれば、潔く死ぬのがいい
これから説得するために何人か親類に仕事仲間に色々と見舞いに来るだろう
もう隠し通せない
ああ、死ぬのだな。死んでしまうのだな。認知症の妻は施設に入っているし、一定の額なら払えるだろうよ
孫は金について出し惜しみをしないと言った
だがな、もう生きるのが辛くなるほど痛いのだ。これをお前が引き継げないなら
死なせてくれ。
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