人工魔法使い

やっとのこと正月気分が抜けた日々は、

私にとって始まりの日でもあって、

これから始めることは、酷く憂鬱で、

楽しく気楽で、でも、どこか虚構めいた、

そんな日々を想像していた。


本当に不思議な気分だった。

その日は選ぶことから始まる。

お好きなものを、と並べられても、

講習会で聞いた内容など頭から消え去っていたし、

ただ本当に、私にはその選択肢しかなかったから。


……無難な物を選んだ。

その結果、その結果、私は最果てにいる。

輪廻と世界の平行の外側に私はいる。

選んだモノは間違いではないし、

実を言うと、よくやった私っと褒めてやりたい。


後悔することは? と聞かれたならば一言。

人間やめたことかなあ、と答える。

近所のおじちゃんも、父さん母さんも、

あの先生に友達に色々、本当に色々。

私と一緒に歩んでいた時間が消えた。


消えたけれども半永久的に続く私は、

滅びの日まで「仕事」を続けなければいけない。

それは家族を守るため、見知った人を守るため、

知らない誰かを守るため、そして生き抜いて散っていった同胞の心に報いる為。

時折「何も考えずに業務にあたってください」と講習会の人を思い出す。


そうだろうなあ、と思った。

考えてたら、感じていたら私は壊れていた。

壊れない為の持参金は喋るし食べるし寝るし戦うし、

慕ってくれるし、怒ってくれる、叱ってくれる、

「一人じゃない」って凄いなあと思った。

同時に世界はクソだなってのも感じた。


でもそんな世界は歴史上いつだってあった。

いまここにいる私は、そうだな。

人間的に言うなら「生きる為に戦っている」だ。

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