火車の如く

事実に頭を抱える貴女を見ていると

よくもまあそんな性善説を唱えられるなと

人はすべて性悪説ですよ、そう言いたい気持ちを抑えまして

私の覚えが間違いでないなら貴女のご親戚は遺産相続争いで血を血で洗う悲惨な事になったではありませんか。

みな良かれ良かれと行動して満足そうにしていましたが、結局のところ収まりついたのは欲のない三男坊で

長男次男は排他されたではありませんか。

他にも視ましたでしょう? あんなに可愛がっていた子が悪鬼の如く振る舞い堕ちる姿を。

それでも「そういう子じゃないのよ」と貴女が言うものだから、

その悪鬼羅刹の如き人のそばにいた私はめしいていたという事でしょうか。


ああ、今、真実を知った貴女は頭を抱えて

被害にあった老害は「被害者」ぶって

私の立場がないというものです。


無知に濫りに生きてきた私も散々後悔しましたから

外側の貴女が苦しむ様はおかしくて仕方がないのです。

口には出しませんけれども。

優しいですね、貴女は。その老害にまで優しくして

一言目には「馬鹿になった」と言っているでしょう?

前は「おまえのせいだ」という罵倒だったのですよ?

想像できないでしょう。

だって貴女は利用されただけです。

その老害と悪鬼は『他人に優しくする自分が好きな愉悦』そのものなのですから。

もしかしたら貴女も『そう』なのかもしれませんが。そしたら切りがないでしょうね。


だからあれらは『離れる』ことをせず、いつでも己のためにキープをしておく。

アイデンティティを失わないように他人の事を考えない。

ああ、その老害の自尊が壊れて本当に良かったと思っています。

思い通りにならないと暴力をふる人でしたから。壊れて責を感じ同情を求めて静かになりました。


貴女に私は言いました。

「世話になったから最期まで私が見ます」と

そういうと周りは持て囃しましたね。私はずっと鼻で笑っていました。

これらに孝行する訳がないでしょう。後々面倒な事にならぬよう先手を打っておきたいのです。

誰が何を言っても、あの悪鬼が現れても法と権力の力で押しのけられるよう土台を作り、静かに暮らす為の準備にすぎません。


きっと貴女は信じないでしょうね。

私が『他人』の死を心から望む欠落した非情な人間であることを。

でも聡明な貴女なら分かっているかもしれません。

一つだけ貴女に言えるのなら「人は全て悪である」それだけです。

そしてそれを私は許さない。許すことができない、その心をずっと持ち続ける事ができる強い人間なのです。

私は『他人』の死を熱望する生来の悪でございます。


大丈夫ですよ、墓場に持っていく話ですから優しい貴女にだけは喋りません。

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