第5話 疑惑と真実②
午前9時
すでに警察庁内では様々な憶測が飛び交っていた。
「拘留所のカメラ映像がメディアに流れるなんて聞いたことがない!
どういうことなんだ!?」
「確かに夕陽テレビの言った通り、ウチから映像が流れたようです。」
「送信者を洗い出せ!」
「そもそも何で拘留所にカメラがあるんだ!」
幹部は火消しに躍起になっていた。
各署でも混乱が相次ぎ、テロ対策部は独立して機動し始めたが
手がかりが少なく膠着状態のまま時間が過ぎようとしていた。
「ゴゴゴゴゴゴゴ…!」
「え…?」
「ちょっと待って!あぶない!!」
「ガッシャーン!!」
「うわぁぁぁー!!」
「キャァーー!!!」
なんといきなり!
一機のヘリが猛スピードで警視庁本部に突っ込んだ!
プロペラが折れ曲がりながら割れたガラスを飛び散らせる。
今度は多くの人が巻き込まれ白い機体が真っ赤に染まった。
側面には【夕陽テレビ】のロゴがあり、
中から操縦士とキャスター、カメラマンが死体で見つかる。
そして操縦席には鷲宮の紋章が入った青年が…。
ヘリに乗っていた操縦士らは刺殺されており
何らかの方法で青年がジャックしたと思われる。
追撃はなく、またも単発の自爆行為だ。
共通する凶悪犯の危険性は異常であり悪逆非道のテロは多くの命を奪った。
~~
「執行台の誤作動により亡くなった●
生前覚せい剤所持や麻薬取引などの罪で懲役刑に処され服役中でした。
また、同氏は暴力団組織の幹部でもあり――」
「あと2年でシャバだったってな。
偶然か必然か、仇討ちが警視庁本部に向いてるってわけだ。」
ヘリの突撃事件のほぼ同時刻、ラジオで執行台の事故被害者が報道された。
テロ対策部に締め出されてしまった“地域課”の2人は
誤作動が起きた執行台のある拘留所に向かっている。
2人が愛用する車は少し古さを感じさせる外観に
ラジオとエアコンのスイッチがあるだけの
昔のサスペンスドラマに出てくるような無骨な覆面パトカーだ。
「拘留所探したって人いませんもんね…。」
関は道路の安全を確認しハンドルを切る。
朝を迎える前、2人は【興毅】の名前まで辿り着き
事件の調書を確認の上、現場調査に踏み出したのである。
「矢島さん、今回の経緯もう一回確認してもいいですか?」
「なんだよ出る前にも確認したじゃねーか、ったく。」
関達は事件の真相に迫るため、時系列でまとめた。
▽4/18(水)▽
午後1時30分ごろ、執行台の誤作動により鷲宮氏が死亡
約8時間後
午後23時ごろ、夕陽テレビがネットで号外報道
約1時間半後
午前0時30分ごろ、現金輸送車ががジャックされ警視庁本部に突撃
(そしてさらに今朝午前9時ごろ、
夕陽テレビの報道ヘリがジャックされ警視庁本部に突撃した。)
「会ったことあるか?鷲宮興毅に。」
「いや、実は正直顔も…写真を見るまで知りませんでした。」
「だろうな。先代の麻薬取締官が精力尽くしてブタ箱に入れた関東一の極道よ。」
「勢力図見ましたけどアレって本当ですか?」
「全盛期の頃のだろ?
逮捕ん時に銃撃戦になって組はバラけたって誰かに聞いたけどな。
誰だっけな…?」
当時関東一を誇る闇組織は、暴力団として経済的な成長を遂げ
やがて海を渡り覚せい剤や麻薬取引の元締めにまで成り上がった。
ほとんど公の場に姿を見せない鷲宮氏だが
それもあってか部下に崇拝されていて短期間で勢力拡大に結び付く。
その若い衆たちが頭領の帰りを心待ちにしていたのは言うまでもない。
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