第4話 疑惑と真実
「テロかぁ…。」
「え〜死刑執行台誤作動で服役囚人死亡?これウソでしょー、ねぇ矢島さん。」
フロントガラス越しに慌ただしい正面玄関をぼんやり眺め、
シートにもたれながら吐いた矢島の言葉は宙に消えた。
スマホのニュース画面を見ながら関は問いかける。
片眉を上げて愛想笑いをした矢島は話に乗った。
「まぁホントだとしても、普通そんなニュース流さねぇわな。」
「ですよね…でも大手の報道会社が記事上げてますよ。」
「漏洩だってか?いつの発表だ?」
「これは…23時ですね。号外ってなってます。」
「そんな時間に死刑なんてしやしねぇよ、何かあるぞ。」
「ですよね。戻って調べてみます。」
2人がタッグを組んでから数々の事件を解決してきた。
と言ってももちろん矢島の方が経験値は遥かに高く洗練されている。
それでも関の直感と行動力は何度も矢島を救ってきた。
“地域課”と皮肉を受けても言い返せるのは、
積み重ねた実績と自信があるからである。
~~
夜が明け、各ニュース番組は
【死刑執行台の誤作動による服役囚人の死亡事故】
で朝から話題が持ち切りだ。
「こちら警視庁より送られてきた映像です。」
キャスターが紹介すると、新型の死刑執行台の説明会が流れる。
大半はモザイク処理してあるが場内で慌てる人たちが映っていてリアルだ。
「監視カメラの映像でしょうか?
設備トラブルで殺されるはずじゃなかった命が奪われるという
悲惨な事故が起きてしまいました。
専門家の飯塚さんはこれを見てどう思われますか?」
キャスターや人気タレントが苦渋の顔で番組を進行していく。
その数時間後、警視庁本部は記者会見を開いた。
「執行台に関する全ての情報は未だ確認中であり、
我々警察が発表するのは極めて難しい状況にあります。
なのでこの映像を含め、執行台に関する情報は信憑性を欠き、
虚偽の疑いがあります。」
「しかし、我々夕陽テレビには警視庁名義でこの映像が送られてきました。
原本も保管しております。
この食い違いは一体どういうことでしょうか?ご返答願います。」
「…げ、現段階では確認中なので詳細は申し上げられません。
内通者も視野に入れて早急に確認致します。」
「それだと国民の方々は納得できないんじゃないでしょうか?
ある程度の見込みがあって記者会見を開かれたと推測しますがその辺りは――」
「これにて記者会見を終了させていただきます。
追加の情報は追って発信させていただきます。」
「ちょっとまだ話が!…待ってください!逃げるんですか!?」
警視庁幹部3名が長机を挟んで記者と向かい合った時間は短い。
時折隣の幹部に耳打ちされながら何も分かっていないと発言したのは
記者会見に慣れていないだけではなかった。
ただでさえ輸送車に突っ込まれた本庁の修復に人員が割かれている事態で
寝首を搔く映像が世に流れたのである。
体裁を保つためとりあえず記者会見を開いたものの
正直に話すことが裏目に出てしまった警視庁。
混乱を静め本質に迫れるか?
慌ただしい朝はまだ続いている。
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