第五節 ゆりかご


あれから切菜はほとんどずっと、ひとの姿で部屋にいて


はじめはぎこちなかったけど 徐々に何もなかったみたいに振る舞うようになった



――なにも見つかっていない


宿った蜂の名や姿までは本を漁れば出てきたけれど


彼女を助ける方法は、なにも




「……ねえ、お星様がみえるわ」




俺は静かに身体を起こす


切菜はじいっと窓の外を見上げていて



「…どうしてそんな落ち着いていられるの?」



たおやかな動作でこちらを向く、その表情にちらつく


母性のようなもの。



「怖く…ないの?」


「……自然なことだわ」


「…自然、な…?」


「命が繋がっていくの。」



でもそれは


きみの子供じゃないのに?



そんな優しい目をして


穏やかな目をして


夢みた空はもう、手に入らないのに



「それに、ユウはずっと守ってくれたでしょう?」



そう、彼女は言うけど



「私をあいしてくれていた、それだけで充分なの」



そんなこと、言うけれど、






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