第三章 あなたはユメの中で

第一節 抜け殻


彼女の笑顔を得る


美しい蝶


その命と引き換えに



それでいいと思ってた



たとえば捕らわれたまま生きる術を与えられない蝶たちも、


それを眺めるだけの異常さに気付いても、


守護という名のもとに 七花の、ただ一人の味方でいられるなら




やがて 蝶を必要としなくなって


羽化するかのようにあの部屋を出ていく彼女


残ったのは俺と


もういない彼女のために捕らわれた


一頭のアオスジアゲハ


未だにあの世界を、七花を、追い続けている





ねぇ、


どうしようもないくらい好きなんだ


もし姉弟きょうだいなんかじゃなかったら


つかまえて、だきしめて、


離さないのに。






――けれど七花の世界には俺を含めて誰も入れはしなかった







ただ一人、


“果楽”というひとを除いて。



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