第九節 鎖解き

急に視界が昏くなったみたいに思えた


やっと彼を見返すより早く掴まれた肩


業火のような眼光


尽きる前に燃え盛る橙が私を飲み込もうとしていた


彼の両の手がひりつく



(その、痛みは)




「夏羅、っ…」


「だったら無理矢理にでも僕のものにしてあげる」




火傷のように抱き竦める腕


いっしょになろうと云った言葉の通り私の体躯に沈み込んでいった


融和は消失にも似ていて



(この、恐怖も)




「愛してる。だから、……中から食べてあげるよ」




呪いのように侵食するくちづけ


思わず目を瞑った暗闇の中で脳裏に焼きつく熱は




(きっと)





みんな、






夏羅あなたのものだった。







―――瞬間、爆ぜた世界



痛みも


恐怖も


熱も


なにも遺らずに



部屋にはひとり 私だけがいた



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