第六節 ほころび


瞼をあげたら白んでいた部屋


ふとした寒気にあたりを見渡す


確かに抱いていたはずのひつぎが なくて


かわりに聞こえた、優しくない声



「探し物は、コレ?」



闇を落とした青色が在った


夏羅の姿 その手にとらわれた彼の死体



「それっ…」



私が手を伸ばすと


嘘を暴くように、笑った。




視界の色がめまぐるしく移り変わる


夏羅は何か嘲ていた


おかしいよ、と


虫を愛するなんて、と


びょうきだ、と



明滅する記憶


選り分けられない感情といっしょに瞬いては散ってゆく…そうして、




「まずは……忘れさせてあげるよ」




掲げられたひつぎが何を意味するのか


気づいたらもう


私は動いていた






突きとばした体が、どんな風に終わりを告げるかも知らないまま。




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