第六節 ほころび
瞼をあげたら白んでいた部屋
ふとした寒気にあたりを見渡す
確かに抱いていたはずのひつぎが なくて
かわりに聞こえた、優しくない声
「探し物は、コレ?」
闇を落とした青色が在った
夏羅の姿 その手にとらわれた彼の死体
「それっ…」
私が手を伸ばすと
嘘を暴くように、笑った。
視界の色がめまぐるしく移り変わる
夏羅は何か嘲ていた
おかしいよ、と
虫を愛するなんて、と
びょうきだ、と
明滅する記憶
選り分けられない感情といっしょに瞬いては散ってゆく…そうして、
「まずは……忘れさせてあげるよ」
掲げられたひつぎが何を意味するのか
気づいたらもう
私は動いていた
突きとばした体が、どんな風に終わりを告げるかも知らないまま。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます