第三節 浮かぶ境界


また会う約束をすると


夏羅は何度も来てくれるようになった


ことばも仕草も違うけど


姿が、果楽といる瞬間を想わせた





「コレ、寄生されてる?」



ケースの中の幼虫を指して彼が言う


気づくなんて思わなかった


言葉は続いてしまう


好きなんだ と



「最高の、愛の形だと思わない? 相手の中に入って、その躯を食むんだよ」



残酷な笑み


果楽が見せることのない、美しいまでの――。



「私は……蝶の方が好き」



言葉は続いてしまう


蝶の方が好き。それは何故?



「……散る時の、儚さが」


「なら、ナナと僕は一緒だ」




還される言葉に僅か退いた


違う


いまは、違う


もう私は“彼”の死を望まない




——“いまの”彼は、その死を望むの。





疑問 確かな不安


だって本当は知っているの


残酷な笑みを零す貴方は消えたあなたににている



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