第九節 目覚めの朝


 みんな忘れて泣いていた


 みんな思い出したように泣いていた


 いのちが一つ消えてしまうことを


 ことばが一つも返らないことを



 それでも、儚い色をしたやさしさだけは


 あなたは残していってくれて





 蝶は死んでしまった


 今まで見たどの蝶よりも美しく


 どの蝶よりも残酷に



 翅を広げる 小さな箱


 その棺に想いを寄せる


 かけがえのない記憶と 一緒に





 あなたと過ごせた時間も


 あなたが見せてくれた貴いいのちも



 太陽のもとへ出てゆけることも






「ありがとう、果楽」






 きこえますか 大切なあなたへ。





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