第八節 声


 体が色を失ってゆく


 幾つ言葉を交わしても


 なんだかとても長い夢を見ていた気分になる


 例えばこれが夢なら、目覚めたくないと思うんだろう




 死んじゃいや、という言葉


 ぽたりと落ちた雫


 僕は彼女が泣いたのを初めて見た




 頬に手を添える あなたの笑顔を真似て笑んでみる




 はじめて会った時



 僕はあなたに恐れを抱いた


 僕はあなたに希望を抱いた


 僕はあなたに憎しみを抱き、



 けれど今はあなたの笑顔の美しさを知っている




(どうか笑っていてほしい)




 透けた体は光の粒になって舞い始める



 果楽、と、悲痛な声が僕を呼んでいる



 言わなければ


 僕が今抱いている、たったひとつの感情を



「聞いて」



 それは恐れでも



「僕は」



 憎悪でもなく










「あいしています……」










 愛という幸せな感情。








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