第四節 空へ


 僕は空へ旅立った


 外はまだ少し暖かかったけど


 身を震わせながら仲間を目指して飛んだ




 ナナ




 七花




 “冬って淋しくて嫌い。蝶がいないんだもの”


 そう言ったあなたの顔が消えない


 憎むべき言葉でさえも僕の心に愛しく残って消えない



 “でも、淋しい。この蝶がいなくなったら私、また一人になる”


 “……大丈夫ですよ。僕はいなくなりませんから”



 約束を破ったね


 僕は君といると、そう言ったのに



 きっとこのまま行っても死ぬのだろう


 僕ではない別の命を ナナではない別の誰かと紡いで死ぬのだろう


 別の……誰かと……




 一度 振り返る


 もう彼女といた場所は少しも見えなくて




 “本当? 本当にいなくなったりしない?


  …ありがとう…。”




 笑顔が…消えない……




 北から刺す様な風が吹きつけた


 僕はもう一度 南の空を眺めた


 それから、


 それから僕は…―――


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