未来が見える板 (三題噺「学園」「漁師」「ボード」)

 ある日、不思議な道具を拾った。下敷きくらいの大きさのそのボードは、人の未来を映し出すことが出来るというものだった。試しに自分の未来を見てみようとしたがボードには何も映らなかった。おそらく所有者の未来は見えないのだろう。仕方が無いので明日、学園のみんなの未来を見てみようと思った。


 学園に到着するなり早速隣の席のA君の未来を見る。ボードには漁船に乗って大きな鮪を釣り上げているガタイのいいA君の姿が映っていた。どうやら彼は将来漁師になるらしい。そういえば彼は釣りが趣味だと言っていた。なるほど、彼らしい将来だ。前の席のBさんはOLに、斜め前の席のC君はみすぼらしい格好をしてダンボールに住んでいた。とりあえず彼の未来をお祈りしておいた。

「何見てるの?」

急に誰か話しかけてきた。友人のD君だ。僕はボードの説明をするのが面倒なので「なんでもないよ」と咄嗟にボードを机に隠した。

 ホームルームの時間が近付いたので自分の席に戻っていくD君にボードが反応した。そこには黒いコートに身を包み、手に持った拳銃で誰かを撃つD君の姿が映っていた。


 10年後、僕はあの時拾ったボードを解析して様々な道具を作り出し、販売した。それらは爆発的に売れ、僕は大金持ちになっていた。

ある日夜の街で散々豪遊した帰り、誰かが話しかけてきた。黒いコートに身を包んだ男性だった。帽子を深く被っているため、顔はよく見えなかったが、不思議とその人物には見覚えがあった。

「α社の社長だな。俺はβ社からあんたの暗殺を依頼された。恨みは無いけどここで死んでくれ」

 男は懐から取り出したピストルを構えた。今分かった。この男はD君だ。10年前、あのボードに映し出された彼の姿だ。

 待て、僕は学生時代の君の友人だ、話せば分かる、とそんな決まり文句のような命乞いをしようとしたが、そのような言葉が僕の口から放たれる前に、ピストルから弾丸が放たれた。

 薄れゆく意識の中で、このボードに僕の未来が映し出されなかったことは仕様でないと気付いたのだった。







雑記

 僕はちゃんと「学園」で統一したのに他の友人は「学校」だの「高校」だの言い換えててイラッときた覚えがあります。そもそも「学園」のワードを指定した本人が使わないのどうなんだよ

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