第5話対決、ドラゴンモドキ 前編
忍び寄る影。
近くに転がっている吸血姫より少し大きいそれは獲物を狙うハンターの如く眼を光らせている。
それとはこの吸血姫が絶対に闘いたくないと言っていた奴。
メルツライ=オーロロッサ・命名
『ドラゴンモドキ』だ。
ーーーーーーーーー
気持ちよくそよそよと風が吹き抜け心地良い太陽光が注ぐ草原に一人仰向けになって眼を閉じている。
全裸・・の吸血姫が。
なに、おかしいことは何も無い。その存在が全裸だろうが見た目が美少女だろうが歴とした吸血姫なのだから。
...鑑定上では。
その吸血姫、メルツライ=オーロロッサは警戒を怠るべきではなかった。
自分が今まで何故あの崖から出ようとしなかったかを忘れるべきではなかった。
そして闘いは静かに幕を開ける。
ーーーーーーーーー
はぁぁぁぁぁーー...
心地良い。
実に心地良い。
いつしかこの様な気候の中で昼寝をした事があったか...
よく覚えてないが全裸でしてないのは確かだ。してたら絶対に捕まっている。
このままずっと動きたくない。
が、そろそろ動かなければなるまい。
重たい身体を起こし腕を伸ばす。
腰回りを解そうと後ろを振り向きそして気付いた。
『ドラゴンモドキ』が近付いてきていることに。
やべえ。
警戒したくべきだった。
今まであれだけここら辺をウロウロしていたあいつがいきなり消えるなんてことはあり得ない。
俺は馬鹿だ。
こうなってしまったからには闘うしかない。
俺はすぐさま戦闘態勢に入りドラゴンモドキを観察する。
こいつの攻撃パターンは幾度と見ている。
初めは積極的に機動力を無くそうと攻撃してくる。
そして動きが鈍くなったところで例のブレスを使って焼き殺す。
こんなノロそうな図体しといて早期決着型だ。
そして案外速い。
そんな戦法の奴に一番効果的なのは...
回避に徹底する。
俺はLV.1だが魔力だけはとんでもない量保有する。
それを生かした回避方法。
『霧化』だ。
あれさえ使えれえればこんな相手どおってことない。
作戦はこうだ。
ドラゴンモドキが突進してきたところで『霧化』を発動。
すり抜けたところで噛み付いて『吸血』を使う。
今の俺の顎の力は半端なかった。崖から抜け出す際に手頃な石を持ってきたのだが、まるで豆腐でも食べてるかの様に噛み切れた。”砕く”ではない”切る”だ。
他にも試したのだが身体能力共々全て大幅上昇していることを確認した。
つまり俺がやろうとしているのはヒットアンドアウェイ戦法だ。
他の魔法を使えばいいと思うかもしれないが一切練習していないものをいざ本番で使うというのは不安だ。その上確実に倒せるかどうかも見当がつかないものを使うなんて論外だ。
そして目の前のドラゴンモドキを鑑定してみたところ。
ー『フレイムリザード』ー
外見は同じく火を吹く『ファイアリザード』に似ているがこの個体の吹く火は炎と言っていい。
『ファイアリザード』に比べ足も早く鱗も硬い。
その硬さは岩石程度だが低ランクの剣や剣技では断ち切ることはできないだろう。
見た目は強面だが肉は厚く美味しい。
戦闘に自信のあるものは積極的に狩って食している。
ランク・C−
とのことであって今の俺ならあの鱗は噛み切って直接、血を吸うことができるだろう。
吸血鬼の本能か人間ではないが吸血したい欲が今にも溢れ出しそうだ。
今のうちに欲を満たしておこうというのが本音。肉が美味しいなら食ってみたいというのも欲のうちだ。
それらの目的もあってこの作戦を取ることにした。
さあ、いつでもかかってこいドラゴンモドキ。
早く肉を喰わせろ。
そして血を吸わせてくれ。
経験の差?そんなもの大幅に開いてなければ作戦でどうにかなるものだ。
俺の思考を読んでたのか知らないがドラゴンモドキはいきなり襲いかかってきた。
お前の実力と俺の転生以前の作戦、どちらが上か試そうじゃないか!!
俺の叫びと共に戦いの火蓋が切られた。
「肉くわせろぉぉぉぉぉ!!!!!」
可愛らしい外見と声に似合わぬセリフだった。
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