第3話鑑定



 飯が食いたい。


 切実に飯が食いたい。


 空腹感は無い。だが飯が食いたい。

 例えば焼肉とかすき焼きとかしゃぶしゃぶとか。


 そんな俺の前で美味しそうに焼かれた兎っぽい何かを貪っているドラゴンモドキ。

 あのコモドドラゴンだと思っていた奴だ。


 最早あいつはコモドドラゴンではない。口から炎を吐く様はもはや小型ドラゴンだ。

 だが、俺はあいつをドラゴンとは認めない。あんなコモドドラゴンそっくりな奴をドラゴンだと呼ぶのはカッコイイがイメージのドラゴン様の名が汚れる。

 だからあいつのことはドラゴンモドキと呼ぶ事にした。


 しっかしあいつは美味そうに食ってやがんな。「その肉よこせ!!」って叫んでやりたいが口が塞がっているから無理だしなぁ。


 そんな光景をじっと見つめていた俺だったがふと自然にはあり得ない物が映り込んでいる事に気が付いた。

 そこにはこんな文が記載されていた。




 ーワイルドラビットの丸焼きー


 ワイルドラビットを一気に1000℃の高温で焼き上げた一品。肉は少なく味付けはされていないが旨味成分が豊富な故美味しく頂ける。


 価値・D





 え?何これ...

 なんか知らないが説明文が出てるんですけど。

 もしかしてあれか?鑑定とかそうゆう類のやつか?

 マジで言ってんの?これあれば大体なんとかなるじゃん。

 もしかして自分の情報とかも分かるのか?

 先程やった事と同じ様に自分の身体にも気を注いだ。




 ー『名前は存在しません』ー


 種族・吸血鬼

 個体・特殊『Daywalker』


 LV.1


 HP・561

 SP・371

 MP・680001



 スキル

 『複製錬成LV.1』

 『言語翻訳LV.ー』

 『魔力強化LV.ー』

 『視覚強化LV.ー』

 『回復魔法LV.1』

 『火属性魔法LV.1』

 『水属性魔法LV.1』

 『風属性魔法LV.1』

 『土属性魔法LV.1』

 『闇属性魔法LV.1』

 『光属性魔法LV.1』

 『鑑定LV.ー』

 『WorldeyeLV.1』

 『身体強化LV.1』

 『結界LV.1』

 『魔法耐性LV.1』

 『毒耐性LV.1』

 『取得経験値倍化LV.ー』


 固有スキル

 『影化LV.1』

 『吸血LV.1』

 『霧化LV.1』

 『紫外線耐性LV.ー』

 『蝙蝠化LV.1』




 称号

 『転生者』・『最後の吸血鬼』・『吸血鬼の姫』・『デイウォーカー』・『世界を覗く者』・『肉喰いたい』





 .......いやおかしいだろこれ、ツッッコミどころ満載なんですけど。

 HP、SPは分かるよ、うん。

 でもさ、MP...

 なんで他のより数千倍高いのかな?おい。

 MPってマジックポイントの略だよな?

 MPを鑑定してみた。


 ーMPー

 本人の魔力総量


 ...間違ってなかったわ。

 まあいい、それとちゃっかり書いてあるけど俺一応”女”らしい。

 『転生』して『転性』しちゃいましたか...

 なんだかもうワケワカンネ。



 てか名前ないの?

 前世の名前は引き継いでない感じ?

 まじっすか。


 あとそれと申し訳程度に付いているステータスの『1』は何?称号の最後にある『肉喰いたい』は何?

 これも鑑定してみた。



 ー『肉喰いたい』ー

 寝る間も惜しまず肉が食べたいと考え続けた者に与えられる称号。


 効果・「HP、SP、MPに+1の補正」



 ...あー、これ俺のせいだな。

 なんかどうでもいい称号付いちゃったな。





ーーーーーーーーー




 さて、本当に鑑定した通りなら俺は『霧化』が使えるはずだ。

 で、あればこの崖に埋まっている状況から抜け出すことが出来るはずだ。



 だが、目の前にドラゴンモドキが居座っているので初めて使うにしてはリスクが高い。

 なので、俺は明日まで待つ事にした。




 あー早くあいつどっか行ってくれないかなぁ...


 ...肉喰いてぇ。



 今日中に脱出は不可能と見た俺は静かに目を閉じ眠りに付いた。


 

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