重力と劣化と

@poporin1121

別嬪さん

私はかつて千疋屋で売られていました。若さと親譲りの外観と恵まれた教育を受け、いろいろな審査をクリアして千疋屋で売られる様な品に出来上がっておりました。周りがドンドン高値で裕福な家庭へ売られていく中、私は自分の値段と千疋屋という場所で少しの優越感に浸りながら、売られていく事を断っておりました。よくよく別嬪さんと言いますが、果物にはとても細かい階級があると思います。形、傷、産地、いろいろな所ではじかれた物は、百貨店、そこそこお高い成城のスーパーや明治屋、大型店スーパー、加工用として業者にまとめ買い、大型店スーパーでも見切り品として、売られていきます。そして、それは生ものなので日々着々と痛みが生じます。採れたては千疋屋で 長期店頭に並べられた物には姿かたちでなくみずみずしさとはじけんばかりの若さで格別なのです。でも、時は残酷にこうしている間にも内側からも外側からも劣化していきます。それを止める方法などこの世に存在しないのです。恋せよ乙女唇の色が褪せない内に。とはよく言った物で、売り時を間違えたらもうそれは破棄するしかないのです。だって日々ドンドン新しく、改良され、綺麗な、若々しいいろんな果物が出ているのですから。誰も、たった一介の売れ残った私の内なる気持ちなど知る由もございません。どんな理由があろうともゴミはゴミなのです。それならば、いっそのこと捨ててくださいませ。私の中にある種はいずれ巡り巡ってまた1から始めれるかもしれません。生きながら苦しさと劣等感 と不安に潰されそうな毎日よりもよほど気持ちが良い物です。もしこの世に慈悲の心があるのであれば、私をどうかこれ以上惨めな思い出がいい思い出を追い越す位溜まっていく前に消費ではなく破棄してくださいませ。

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