怠惰な少年は行き場を失う②


「ん?幸福……商店?」


 別に派手な訳では無い。むしろ地味で台風でも来たら吹き飛ばされてしまうような、ボロ屋とでも言うような建物。


 そこにかかっている看板。そこに書かれている

『幸福商店 あなたの願い叶えます』

 の文字。


 胡散臭いと思いながらも気になったから入ってみる。


「ようこそ幸福商店へ。当店ではお客様の願いを叶えます。」

 ただし、一つだけ、と付け加えて笑う。

 その笑いにはどこか暗く、黒い物を感じてしまう。


「あの……お代は……?」

 コミュ障発動しながら尋ねる。


「そんなもの頂きませんよ。人々の幸福は義務。私はそれを手伝っているだけです。まぁあくまで持論ですが」


 本当に大丈夫なのだろうか。


 お金が発生するならその時払えばいいと考え直し、思考回路を巡らせ願い事はないか、と一人で唸る。


 あるじゃないか。


 有名になりたい。


 一番の夢が叶えられるチャンスなんだ。逃すわけにはいかない。


「歌い手として有名になりたいんです!お願いします!」


 うっかり大声になってしまう。

 けれども店員さんは驚く様子もなく笑いながら頷く。


「承知しました。明日の朝には叶っていますから。お楽しみに」


 そう言われて店をあとにする。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 夜食を買い、部屋でパソコンを開く。


「きっと明日には人気者になっているんだ。」


 そう思うとニヤニヤが止まらない。



 明日からは忙しくなるんだろうな……。なら今日はゆっくり寝るか。



 そう考え、早々に寝る支度をする。



 布団に入ってからもニヤニヤは止まらない。


 明日が楽しみだ。


 きっと大物になってお金持ちになってやる。

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