怠惰な少年は行き場を失う①
「有名になりてぇ」
何も無い天井に向けて仰向けになって呟く。
今年から大学生デビューしたものの友達作りに失敗した俺は歌い手というものを目指し始めた。
昔からいわゆる「オタク」のレッテルを貼られて周りに避けられてきた俺の唯一の安息の地。それこそがネットだった。
そこで出会った『歌ってみた』。最初は興味本位だったがアレンジとか替え歌とかそういったものの面白さに気づいてからはずっと歌ってみたを聴いている。
そんな俺も大学生活を始めて一人暮らしデビューした訳だが当然リア充とかパリピのテンションについていけず一人で夜は歌って投稿している。
何か特別なことをしているわけじゃない。歌いたい時に歌いたいものを歌いたいように歌って投稿している。
顔出しをすれば有名になれるかと思ったらそういう訳でもない。かと言って声を変えて歌ってみても変わらない。
周りと同じことをして人気を集めようとしている時点で間違っている。その事に気づいてもやらない惰性は治らない。
「食いもんねぇじゃん」
頭冷やしに行くついでにコンビニで買い物をすることにした俺は動かしたくない重い体を動かす。
着替えも終わって玄関に鍵をかける。
「やべ、財布忘れた」
体にICチップ埋め込まれてたら楽なのに……。
そんなしょうがないことを考えながら準備し直す。
気を取り直して家を出る。
この外出が自分以外の人間の運命さえも帰ることになるとは知らずに……。
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