少女は一人になりたかった②


 目覚まし時計が鳴る。


 待ち続けていた朝が来た。いつもなら起こしに来る親は声をかけてこない。


 もう少し寝ようとゆっくりしていようと声はかからない。

 いくら何でも学校に遅刻するのはまずい。いい加減起こしてくれてもいい。


 リビングに行っても親はいない。


「お母さんまだ寝てるの?」

 そう言って寝室の扉を開ける。それでもいない。

 かと言ってメモがある訳でもない。


 ただ出かけているだけだろう。そう思って学校に向かう。


 なんだろう、この違和感。


 その答えはすぐに出た。誰もいないのだ。


 誰かがいないだけじゃない。車も、自転車も、バイクも。何も通らない。

 出勤時間帯だから絶対に誰かいるはずなのに誰もいない。


「もしかして昨日私があんなこと言っちゃったから?」


 焦りが生まれる。


 行かなきゃ!

 そう思った時には足が動いていた。

 決まっている。幸福商店に行って元に戻して欲しいと願えば解決するはずだ。


 良かった……開いてた。



「店員さん!元に戻して!誰もいないの!」


 そう怒鳴って店に飛び込む。


「無理ですよ?昨日言いましたよね?願い事は一つだけ。と。元に戻すのも取り消すのもあなたの願いは叶えられません。」


 無慈悲で冷たい声。

 それが怯えた心に突き刺さったのは確かだった。


 かつて大人達が言った自分の言動に責任を持て。


 こういうことだったのか、と頷ける。

 けれどもう遅かった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 誰もいなくなった街に一人佇む、後悔と絶望に心を支配される少女。


彼女は一体これから先どうするつもりなのか……。




少女は一人になりたかった 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る