少女は一人になりたかった①
「
「由奈、なんでこんな点取ったの?」
「由奈〜早く〜」
「由奈、早くしなさい」
口を開けば由奈、由奈……とうるさい。私だって言われたくて言われているわけでもしたくてしている訳でもない。
単に周りが厳しいだけなのだ。
そう思って塾に向かっていると一軒の店が目に入る。別に派手な訳でもないし看板が堂々と出ているわけでもない。
ひっそりとかかっている看板。
『幸福商店 あなたの願い叶えます』
そう書かれている。
願い事を叶えてもらえるなら周りに何も言われない環境が良い。そう言う環境を作ってもらいたい。
そんな期待を胸に扉を開ける。
「いらっしゃいませお客様。こちら幸福商店です。あなたの願い、何でも叶えます。」
何とも怪しく胡散臭い挨拶。
「こちらが願い事を叶えてもらえるというお店ですか?」
ビクビクしながら尋ねる。
「ええ。あなたの願い何でも叶えますよ。」
但し一つだけ、と付け加える店員。
一つだけなら後悔しないようにしないと。そう思って悩む。
彼氏が欲しい?誰かに何か言われない環境が欲しい?お金が欲しい?
欲しいものがあるすぎるけど、やっぱり誰かに何かを言われない環境が欲しい。
「誰かに何か言われることがない一人で何でも出来る環境が欲しいです。」
悩んだ末の願い。これで母親にも先生にも何も言われないで話が出来る。そんな期待をする。
「ええ、分かりました。明日の朝には願いが叶っていますから。お楽しみに」
そう言う彼は微笑む。そこに何か黒い物を見た気がするが多分気のせいだ。
期待を胸に塾に行く。親に何か言われるのが嫌で早く家を出たかいがあった。
塾向かう足取りはいつもより軽い。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「ただいま!」
そう言って家に帰る。
今日はもう疲れた。肉体的にも精神的にも。
「今日はお風呂入ってもう寝るね。」
そう言ってさっさとお風呂に入って寝る支度をする。
「おやすみ〜」
気怠い声でそう言う。
母親が背中に向かって何かを言っていた気がするがもういい。
あとは夢も期待も何もかもを胸に朝を迎えるだけだ。
そう思った布団に入る。
明日が楽しみだ。
一体どうなっているんだろう。
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