怠惰な少年は行き場を失う③
目を覚まし、PCを開く。
首を長くして待ちすぎてろくろ首にでもなってしまうかのように長い夜だった。
何を言ってるんだと思われそうだけどそれくらい長い夜だった。
試しに呟く。
『俺がこうしてみんなに見てもらえてるのは願いが叶ったからなんだ。幸福商店ってお店を見つけたら寄ってみるといいよ!』
今までと何ら変わらないつぶやきのはずなのに反応が違う。
その日から俺の生活は一変した。
呟けばいいねがたくさん付き、歌ってみたを投稿すれば高評価、マイリスト登録は当たり前。
一晩にして話題の人気者になってしまった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
折角の休日を無駄にする訳には行かないと、出かける準備をする。
たまにはショッピングモールに出かけようとバスに乗るために並べば声をかけられ、電車に乗ればチロチロ見られる。
マスクとかで変装しようとしても効果なし。マスクのステルス機能貫通とかどんな能力だよ……。
インターネットを開けばXXXXを〇〇で見たと書き込まれ、落ち着かない。
当然の事ながら解禁されたR-18なんかなんの役にも立たない。
言わなくてもわかるだろう。評価が下がってはダメなんだ。
その日から出かけるのが怖くなった。
どこに行っても書き込まれる。
苦労せずに一晩で手に入れた人気に体が追いつかず、心も追いつかない。
結局得たものは何一つとして無くて失った日々は遠のいていく。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そうして怠惰な少年は夢を叶えたことで行き場を失ってしまった。
怠惰な少年は行き場を失う 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます