Long December Days:35

男が鼻で笑って、文成に言う。

「そんなことができると本当に思っているのか?お前の戦闘力じゃ到底ニコラスの野郎には歯が立たない上に、お前の未来視は簡単にジャミングが効くんだぞ?」

それに対して、文成が言う。

「僕の未来視は、僕自身を見る時と他人を見る時とで効果が全然違う。今だって僕の身にこれから何が起こるかは分からないが、君が何を言うかであれば容易に分かる。だから僕は未来視を使った時には誰にもじゃんけんで負けたことがない。武術であっても同様だ。敵の手が全てわかっているのだから、僕はそう簡単には負けない。だから、歯が立たなくても時間稼ぎくらいはできる。それに、勝算があるんだ」

「勝算?」

そっけない態度で男が言うが、幾分興味が湧いてきたような声音になっている。

「機動力を犠牲にすれば、僕の内臓バッテリーを今の2倍に拡張できる。多少見た目も悪くなるが、そんなことは大事の前の小事だ。それだけあれば青銅の鍵を使うことによる電力消費にも対抗できるはずだ。そして、僕は未来を確定させるとっておきの必殺技がある。組み合わせれば誰にも妨害されることなく攻撃することができるだろう」

その言葉に対して、男は首を横に振る。

「気持ちは嬉しいが、二倍程度の電力ではどうにでもならない。ニコラスも青銅の鍵を持っている上に、奴の方がお前よりも遥かに上手く使いこなしている。奴は青銅の鍵を使って隕石を降らせるんだ。お前にはそんなことはできないだろう?それだけ青銅の鍵の使いこなし方に差があるんじゃ、いくらこっちが攻撃に使っても打ち消されるのが関の山だ。奴の性格上、打ち消す必要もないような小さな力なら無視するが、そんなものを使っても身は守れない。それに、奴にも未来視がある。どれほどの精度かまでは知らんがな」

「――ニコラスという相手は自己愛が強い。そして、彼の性格上、『これは下品だ』と判断したものにはたとえ何があろうと手を出さない。予め何が起こるか予測するので、危ない場所には自ら近づかない」

「その通りだ」

自嘲的な笑みを浮かべて、文成が男に告げる。

「……汚物でもぶつけてみたら大人しくならないだろうか」

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